第59話 ページ12
主人公side
「本当に、これで良いんだよな?」
震える俺の手にあるスマホの画面には、メッセージアプリのトーク画面。
桜乃ちゃんとのトーク画面には、乙女に言われた通りのメッセージを送った。
「勿論よ。そして、桜乃ちゃんが来るまで永遠に待ちぼうけしていなさい!」
そう言い切った乙女は、アイスコーヒーとケーキを平げて席を立った。
「ごちそうさまっ!私はこれから学校戻るから、進展あったら教えてね」
赤い唇で弧を描く乙女は、ギリギリまで短くしたスカートを翻して、「あの子はどんな顔してるかしら?」なんて言葉を発しながら鼻歌交じりに喫茶店を出て行った。
窓の外へと目を向ければ、あいつを待っていたであろう数人の女子達。ケバい化粧の取り巻き連中は、乙女を囲って笑っている。
「てかあいつ、一番高ぇケーキ食っていきやがった」
コーヒーのおかわりを頼み、煙草を咥え火を付ける。
深く吸い込み、肺を煙草の煙で満たし、紫煙を吐く。
ぼんやりと喫茶店の天井を見上げながら、果たして彼女が俺からの連絡を見てくれるだろうか、なんて考える。
あれから乙女にこってり絞られた。
今までの女達は、付き合わずともキスひとつで喜んで勘違いしてくれていたから、俺の中で『キスしとけば好意が伝わる』なんて歪んだ考えが生まれたんだと思う。
桜乃ちゃんみたいな純情少女には、間違いだったと分かったのは般若の様な顔をした乙女に正座させられ説教され始めて二時間が経った頃だと思う。
「来てくれっかなぁ」
煙草の灰を灰皿に落としつつ、項垂れる。
『話がしたい。シナモンで待ってる』
そんな言葉を、桜乃ちゃんに送った。
乙女からは、返信が来なかったり、桜乃ちゃんが来てくれなかったら諦めろとまで言われ、既に気分が沈んでる。
最低な事をやってしまったらしい俺に出来ることは、桜乃ちゃんが現れるまでこの場所で待つ事。兎に角、俺は意外と誠実な人間だぞってアピールをしなければならないらしい。
桜乃ちゃんが来たら謝り倒して、告白しろって。
「されんのは多いけど、するのは初めてだな」
灰皿には煙草の山が出来上がっていた。連絡を送ってから時間はそれほど経っていない。
ただ、俺の気持ちが落ち着かず吸うスピードが速いだけ。
「待つのは、好きじゃねぇんだよな」
何本目かになる煙草を咥え火を付けた。
ジリジリと燃えていく煙草を見つつ、深く吸い込んだ。
瞬間、軽快なドアベルが鳴った。
90人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
バンビ(プロフ) - 真理さん» 現在更新のペースがかなりゆっくりになってしまっていますが、時間を見つけて更新をしていきますので、今後ともよろしくお願い致します。 (1月25日 23時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
真理 - バンビさん» 続きまだですか? (1月24日 7時) (レス) id: e1f8464f5a (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - リコさん» ありがとうございます。今後も楽しみにして頂ける様に更新していきます。 (2021年7月18日 11時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
リコ(プロフ) - 続きを楽しみにしてます! (2021年5月9日 6時) (レス) id: 8b5e530447 (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - 紗衣さん» ありがとうございます。非常にゆっくりな更新になっていますが、楽しみにして頂ける様に頑張ります。 (2021年4月10日 0時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:バンビ | 作成日時:2020年9月4日 12時