[d!]紫煙の感覚を知っている。 (ページ15)

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「…どうしようかな」

連れてきてもらってお風呂も服も貸してもらって。…歯磨きはどうしよう。
ズボンを必死に持ち上げ歩くが、こんなんでは碌に歩けやしない。
取り敢えずリビングに辿り着いたので、ソファーに腰掛ける。
図々しくやないか私。
シャワーの音が聞こえて、ああほんとにしょっぴくんの家に居るんだなぁ、なんて実感した。

「寝れないしなぁ。待っておくか」

歯磨きしていないから寝れないが、眠いったらありゃしない。
やっぱりお酒は駄目だなぁ。大学の頃からそうだった。
匂いで少し酔ってしまう私は、今まで酒の席を必死に避けてきた。まあ、入社したらそれも無理になったが。
これのお陰でしょっぴくんと一緒に居られるなら、まあ良いかな。

「…何考えてんだろ、私」

お酒を飲むと頭が痛いし、何か上手く喋られないし、頭回らないし、何もかもうまくいかない。
大人の嗜好品とは難しい限りである。

「Aさん？」
「あ、しょっぴくん。歯ブラシって貸してもらえる？」
「ああ、そういや出してなかったっすね」

そう言ってしょっぴくんは戻っていった。私はその後を着いていく。

「これ使ってください」
「うん。ありがと」

変えであろう新品のものを渡された。
他の人が使った物を使うのは無理なのでしょうがないのだが、申し訳ない。
…歯磨き粉使っても大丈夫だろうか。

しょっぴくんがリビングに行った。
仕方なくズボンから手を離し、歯磨きを始めた。
カシャカシャと音がする。この歯ブラシ、ちょっと大きいなぁ。なんて考えていた。

「あ、Aさん。うがいはこのコップ使ってください」

しょっぴくんの声が聞こえた。
そちらの方を見ると、しょっぴくんがコップを持って立っていた。

「ん。はひはほ」

コップを受け取り、うがいをした。
しょっぴくんは糸ようじまで用意してくれていた。有難い限りである。

「しょっぴくん、歯ブラシと糸ようじありがとう」
「どういたしまして。もう寝ますか？」
「うん」
「じゃあベッドに案内しますね」
「え？流石にベッドまで借りるのは…」
「別に大丈夫っすよ。
…あ、でも煙草の匂いしますけど、大丈夫ですか？」

しょっぴくんは、ああ思い出した。と言わんばかりの表情をして言った。

「ソファーで充分です…
しょっぴくんって喫煙者だったんだね」
「あれ、知らなかったんすね」
「うん」

それらしい匂いもしなかったしなぁ。