「我儘」 ページ4
登校中、チラホラと高校生が登校しているのが見えた。そう言えばそろそろ進路も決定させなければ。近くの江古田でもいいんだけど、私立の女学校も勧められている。そっちは遠いし授業料とか交通費とか高いからあんまり行きたくない。親に負担をかけるのは気が引ける。
ハッキリしない、自分が嫌いだ。
ふぅ、とため息をつくと、前方から歩いてくる男女に目がいった。その男女は口喧嘩をしながら私たちの横を通り過ぎる。
「……?」
なんだか懐かしい匂いだった。最近嗅いだことがある。何処だっけ。でもあの人とは会ったことないはずだし、思い違いかな。
どうしたの、と菜摘に聞かれたので、「ううん、人違い」と返しておいた。
家に帰ってから、なんとなく携帯を眺めていた。某チャットアプリのTLをスクロールしていると、パッと新しい投稿が出てきた。
『怪盗キッドまた予告状出したって!めっちゃ楽しみなんだけど!』
ぴく、とスクロールしていた指が止まる。
「予告」
脳に刻み込むように繰り返す。
「怪盗キッドが、予告。」
それはつまり、寂しい夜が楽しい夜に変わるということ。
姉として、長女として、クラス委員長として気を張って……誰にも相談できず1人でため息をつくのにもおさらばだ。
自然と口角が上がる。自分のことや身の回りのことを全く知らない相手と話すのがこんなに気楽だとは思わなかった。
「予告日、三日後かぁ……」
「怪盗キッド?」
背後からの声にバッと振り返る。菜摘だ。
「菜摘かぁ……。そうそう、三日後にまた宝石盗むみたいだよ。」
「へぇ……嬉しそうだね。」
「顔に出てた?実は私マジックに興味あるんだ。」
「ふーん……そっか」
私が彼と会うことは秘密なのだから、バレないように適当な嘘をついておく。菜摘は意味深な返事を残してさっさと部屋に戻ってしまった。あれ、なんか朝もこんなことあった気がする。
やっぱり双子というだけあって、私のことはよくわかってしまうのだろうか。私も菜摘の考えてることがわかったりするけど、人に無関心な彼がそんなに鋭いとは思わなかった。
もし、菜摘にこのことがバレたら……私はもうあの怪盗と言葉を交わすことがないのだろうか。人格を誤魔化して他人と対話することしか出来なくなってしまうのか。そう考えただけで嫌気がさした。
私だって、普通でありたい。でも他人の思い描く理想の自分を壊すのは怖い。
これは私の我儘なのかもしれないと、自身の弱さに失笑した。
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乃花おむ子(プロフ) - 白。さん» ありがとうございます!これからも気が向いた時にちまちま続編というか、後日談の「Secret Lover」更新していきますのでよろしくお願いします!レス返すの遅くなってしまいすみませんでした〜! (2020年2月19日 19時) (レス) id: 6c075283b8 (このIDを非表示/違反報告)
白。 - コナン知ってて、まじ快知ってて、あんスタまで知ってるとは…。作者さんとはお友達になれそうです!偶然見つけた作品なのですが、良いのに当たりました。他の作品も楽しみにしてますね。ささやかに応援します。 (2019年5月7日 20時) (レス) id: 0235a92526 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:乃花おむ子 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Omutarosan1/
作成日時:2019年4月13日 20時