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『オレの本音』 ページ29

ずっと迷っていた。

彼女に会いたい、でも、弟に見られていたのならオレは捕まってしまうんじゃないだろうか。

______あぁ、自分のことしか心配できないオレは本当にクズだ。

でも、彼女は直接話に来た。

オレと話したいと言ってくれた。

その時、胸がバクバクと鳴っていた。顔が火照るのを必死で抑え込んだ。

名探偵がそのあとやって来て、「気持ちに答えねえのは紳士的とは言えねえんじゃねえのか?」なんて煽ってきた。

それでも迷ってしまうのは、自分の気持ちを認めたくないからなのか。

宝石を名探偵に放り投げると、オレは柵をとびこえて自宅へ戻った。





*☼*―――――*☼*―――――







十五夜。月が丸く明るく光っていた。

決意を決めたオレは、彼女の家に向かっていた。

ベランダの手すりに降り立つと、窓際に少女がうずくまっているのが見えた。





「どうして来てくれないんですか……









怪盗キッド」




初めて名前を呼ばれた。鼓動がうるさい。

「お呼びですか、お嬢さん」

そう声をかけると、彼女は顔をあげて戸惑っていた。

戸惑う彼女に、「話を聞かせて」と言えば、彼女は嬉しそうに話し出す。

今回は、きちんと自分の話もした。犯行時の話とか。

そんな話をしていたらもう3時。

お開きの時間だ、と手すりに足をかけた時、グンっと後ろに引っ張られた。

そのまま尻もちをつく。

恐る恐る少女の方を向くと、彼女は思い詰めた表情で「伝えたいこと」を話し始める。

オレはその言葉が最後まで紡がれる前に彼女の唇を閉じさせた。

驚く彼女に、オレはできるだけ優しい声色で言った。

「貴女のような素敵なお嬢さんが、私のような犯罪者を好きになるなんて。

ご両親が悲しみますから」

彼女はその言葉を聞いて、顔を歪める。バシッと手を振り払われ、オレも驚く。優しいだけの少女ではなかったらしい。

彼女はオレに、オレの心に届けるように叫ぶ。

「私は本気です、私のこれは本音です。

私、本音で話してるんです!

……っだから!私は貴方の本音が聞きたい!」

心が動くのがわかる。目の前が揺れる。ああ、涙なんか流しちゃいけない。

ぐっと拳を握りこんで俯く。

「オレは……」

ぽろ、と零れる。

「オレだってずっと……」

胸に溜め込んだ想いが、ポロポロとこぼれ落ちていく。

顔を上げて彼女を見ると、不安げに揺れた瞳と視線がぶつかる。

「お嬢さん」

震えそうになるのをなんとか抑えて少女を呼ぶ。

[ Secret Lover ]→←「貴方の本音を聞かせて」



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乃花おむ子(プロフ) - 白。さん» ありがとうございます!これからも気が向いた時にちまちま続編というか、後日談の「Secret Lover」更新していきますのでよろしくお願いします!レス返すの遅くなってしまいすみませんでした〜! (2020年2月19日 19時) (レス) id: 6c075283b8 (このIDを非表示/違反報告)
白。 - コナン知ってて、まじ快知ってて、あんスタまで知ってるとは…。作者さんとはお友達になれそうです!偶然見つけた作品なのですが、良いのに当たりました。他の作品も楽しみにしてますね。ささやかに応援します。 (2019年5月7日 20時) (レス) id: 0235a92526 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:乃花おむ子 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Omutarosan1/  
作成日時:2019年4月13日 20時

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