「約束」 ページ3
「おや、気づかれるのも時間の問題……お嬢さん、私はこれで。私と話していたことが気づかれないよう、私はさっさとお暇しましょう。」
キッドが1歩下がって軽く飛び、手すりに立つ。
「あ、あの……」
控えめな大きさで呼び止める。「どうしました?」なんて優しい声で聞かれる。
「……また、次の予告日の夜中。お話し相手になってくれますか。」
どくんどくんと胸がうるさくて吐きそうだった。緊張で冷や汗が出てきて気持ちが悪くなった。決死の覚悟だったのだ。
「!」
彼は一瞬驚いたような顔をして、数秒考え込む。その後また口元を緩め、シルクハットのつばを下げながら
「勿論、お嬢さん。貴方が望むなら……この神出鬼没の大怪盗、いつでもお話し相手になりましょう。」
その答えを聞いた私は安心して体の力が抜けてしまって、立ってるのがやっとだった。「約束ですよ」と震えた声で言うと、「えぇ、私は約束を破りませんよ。」と答えた。
「それではまた、次回の予告日にこの時間で。」
そう彼が言ったと同時にサイレンの音が大きくなり、ヘリコプターのライトがベランダに差し込む。私は咄嗟にカーテンに隠れた。カーテンに照らされた外で、マントがはためいて落ちていった。
彼が触れた私の左手が、まだ温もりを持っていた。
*☼*―――――*☼*―――――
「嬉しそうだねA。」
翌日朝。朝食をとっていると隣から眠たげな声が聞こえてきた。双子の弟、菜摘が声をかけてきた。
「菜摘。うん、凄くいい夢を見たんだ。」
笑顔で答えると、菜摘は「ふーん」と意味ありげに流した。なんか見透かされているみたいで怖いなあ……なんて思いつつ目玉焼きののったトーストにかぶりついた。
セーラー服に袖を通し、踵を鳴らして学校指定のスニーカーを履く。勉強道具の入ったリュックを背負うと、私は大声で呼びかけた。
「菜摘ー、早くしないと置いてくよー!」
「待ってってば。」
パタパタとスリッパを鳴らしながら菜摘が駆け寄ってくる。あーあー、学ランの袖のボタンは外れてるしベルトもゆるゆるだ。急いできたんだな。早め早めで行動しないからこうなるんだ。
「服装くらいちゃんとして。」
ボタンを嵌め、ベルトも締めてやる。ごめんごめん、と言いつつこの子は全く反省していない。
「「行ってきまーす」」
息ピッタリに言うと、リビングから母の声がした。
「Aちゃん菜摘ちゃんいってらっしゃい!」
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乃花おむ子(プロフ) - 白。さん» ありがとうございます!これからも気が向いた時にちまちま続編というか、後日談の「Secret Lover」更新していきますのでよろしくお願いします!レス返すの遅くなってしまいすみませんでした〜! (2020年2月19日 19時) (レス) id: 6c075283b8 (このIDを非表示/違反報告)
白。 - コナン知ってて、まじ快知ってて、あんスタまで知ってるとは…。作者さんとはお友達になれそうです!偶然見つけた作品なのですが、良いのに当たりました。他の作品も楽しみにしてますね。ささやかに応援します。 (2019年5月7日 20時) (レス) id: 0235a92526 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:乃花おむ子 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Omutarosan1/
作成日時:2019年4月13日 20時