〈完〉本能の領域

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ゾッとした。

AがΩであるという事よりも、もっと後ろの方で。俺は何度、Ωへの嫌悪感を彼女の前で出した？






ずっと言おうと思ってたんです、でもユンギさんとの距離が近づけば近づくほど言えなくなって、そう嗚咽と共に吐き出されたのはきっと紛れもないAの本音だった。

俺はΩが嫌いだ。おそらくAがΩであろうとなかろうとΩというものは嫌いだったと思うしこれからも好きになることは無いだろう。
まだ受け入れきれていない自分がいて、ちょっと待てと牽制を掛ける。第2の性は、生きていく上で厄介すぎて、手に負えない。






「A...」
「ごめんなさいっ...ずっと、貴方を騙していた、っ...！」






騙していた、Aからすればそうなるのか。確かに俺もジミンからβだと紹介を受けていた。けれどどうしてか騙されていた、と思うには脳内は平穏であった。ただ何事も無く、AがΩであると受け入れようとしている。半分ぐらいの理性の話だが。

Ω、オメガ、omega。性別の壁は厚い。受け入れようとする俺と、受け入れきれない俺が内部で亀裂を作る。






「...A、顔上げて」
「っ、う.....ゆん、ぎ...さ、」
「.....俺が怖いか？」






ゆっくりと彼女の顎を掬い上げる。ぼろぼろと涙を流す彼女が、あまりにも弱い存在であると感じた。
涙を拭うように両手で頬を包み込むと、ごめんなさいと、何度も謝る彼女に俺こそごめん、と言葉が溢れる。

受け入れられない、今の気持ちを伝えればAは目を大きく見開いて俺を見つめた。






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