〈完〉本能の領域

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『もしもし？』






あの日から、私とユンギさんの関係は少しだけ進んだように思う。

来週の日曜に会おう、なんて話はその後時間や場所まですぐ決まって、私は暫くユンギさんと話すことが無くなってしまった、と時間を持て余していたら突然掛かってきたユンギさんからの電話。
特にお互いに用事は無かったのにユンギさんは用が無かったら電話しちゃダメなのか？なんて。

それからというものユンギさんは暇を見つけると私と電話をしたがるようで、夜になるとユンギさんと通話するのが日課になり通話履歴はジミンからユンギさんへと塗り替えられた。






「今日もお仕事だったんですか？」
『ん、大したことしてないけどな』
「土曜ぐらい休んでくださいね」
『いーよ、明日めいっぱい休むから』






最近は忙しいみたいで、ジミンからも疲れるとか眠いとかっていうメッセージが飛んでくるぐらい忙しなく動いているらしい。
ユンギさんは働き詰めるくせがあるとジミンが言っていた。
ちゃんと休んでほしいと伝えれば明日休むというから、不安になってしまって。

明日は先週から決めていた私と会う日で、もしかしてユンギさん忘れてる...？と思って黙ってしまうと察したのか電話越しにユンギさんが笑ったのが聞こえた。






『俺の癒しはAだから』
「っ.....！？」






くつくつと喉の奥で笑う声が聞こえる。
ユンギさんは最近、すぐ歯の浮くようなセリフを言う。
なんだかすごく恥ずかしくて、明日の事忘れてなかったんだって安堵よりも明日私は街中で死んじゃうんじゃないかって、そんな事を考えてしまった。






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