〈完〉本能の領域

2 ページ3

.






「ねぇ、Aってもしかして一生恋愛しない気でいる訳じゃないよね？」






ジミンからそう問いかけられたのは、本当に三日ぐらい前のことで。

営業先が私の働くカフェに近いから夜ご飯食べに行こ、と昼間誘われいつもの様に彼が提示してくれた飲み屋に集まればまたこれもいつもの様に恋愛相談。いや相談はしてないから、ジミンのお節介とでも言うべきかもしれないが彼なりの心配なのを私は知っているので恋愛相談というていにしておく。

大体これが飛んでくる時は酔ってるかストレスが溜まってるか。






いつも通り流そうとするも、今日は随分引き下がってくれない。私のような人間が恋愛をするなんて無理に等しいだろう。それは私の性格上って話でもあるし、第2の性の問題でもある。

Ωは、この社会の中で一番冷遇されている。
私の母もΩだったからその酷さはよく知っているつもりだ。ジミンだって、小さい頃から私の傍に居たんだ。知らないわけじゃない。






「.....できないよ、」






こうやって働けているのもジミンがβとして生きることを勧めてくれたからだ。私は本当にそれに感謝してるし、出来ることならジミンに心配も掛けたくない。

不満そうに眉を寄せたジミンはキムチを摘みながらねぇ、とまた仕切り直すように声を掛けてきた。






「じゃあさ、恋愛とか気にせずAに会ってほしい人が居るんだけど」






だめ？そう言って首を傾げるジミンに少し渋ってから分かったと答えれば、可愛らしい糸目を僅かに弓なりにさせてジミンは笑顔を浮かべた。






.

3→←1

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す