人間の本質【後日談】 ページ28
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「ありがとうございます」
安吾さんに頭を下げられ、僕らは顔を見合わせる。お礼を云われるようなことなんて何ひとつしていない。
「……君達が墓参りに来てくれたことが何より嬉しい。きっとあの子も、そう思っているはずです。それに来てくれたのが君達で良かった」
「……僕は来ても良かったんでしょうか……」
思っていたことをそのまま口にすると安吾さんは柔らかく微笑んだ。そして国木田さんに目を向ける。
「君は何時も来ていますね。多い時には朝と夜、二回……何故？」
「俺は……清野さんに『あなたは間違ってない』と云われたんです。何故探偵社員の俺にそんな言葉をかけたのか分からなくて、ずっと考えてました。そして、あれはきっと清野さんの本質だったのではないかと。清野さんの両親が殺されなければきっと彼女は優しい少女のままだったはずだ。俺はまた……助けられなかった……」
国木田さんは拳を握り締める。
ナオミさんと谷崎さんが今にも泣き出しそうな表情で国木田さんを見ていた。でも、国木田さんは何一つ間違っていない。清野さん自身がそう云ったように、間違っているのは国木田さんではない。
間違っているのは、
「あ、あの！こういった話はやめましょう。
ずっとこンな話をしていても清野さんが困るだけかなぁって……」
谷崎さんが困ったように云うと二人とも頷いた。
「あの子は今どうしてるんでしょうね……」
安吾さんが空を仰ぐ。
ご両親と再会して……楽しくやっていれば良いな。そういう願いを込め、僕は大きく頷いた。
清野Aさん。
あなたが一番変わって欲しかったであろう
鏡花ちゃんも太宰さんも何ひとつ変わっていません。
慌ただしく毎日が過ぎていくばかり。
一日一日が過ぎていく度、みんながどんどんあなたのことを忘れていくんじゃないかとすごく不安でした。
変わらないみんなに、変わっていく僕。
きっと壮絶な人生を送って人が死ぬのを沢山見てきた二人にとっては小さな出来事だったのかもしれない。
でも、僕は。少なくとも僕らは
変わりました。
それがすべてです。
あなたの安らかな眠りを心より祈って。
.
終わり
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