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廿陸話 ページ29

「ハァ、ハァ……着いた」




蝶屋敷から少し離れた通りに煉獄家はある。大きな門を構え、まるで歴戦の炎柱の有様を表しているかのように荘厳な屋敷。そんな屋敷を前に、ここに来るときはいつも身構えてしまうのだ。





まあまあある距離を全速力で走ってきたためか乱れた息を整えようと、膝に手をつく。3日何もしなかっただけでこんなに走れなくなっているとは。自分の体力の無さに呆れてしまう。



「すみません」



自分にあるできる限りの声を出して門を叩くが応答無し。私がこうした所で誰も気づかないのは分かりきっている事だけど、これをするのとしないのとでは大きな差がある。


こうして声をかけたという事実があれば、無断で家に入っても大丈夫なのだ。不法侵入だと言われて疑われては、こちらとて不服なのである。




もう1回門を叩いて誰も気づかないのを確かめると、そっと門を開けた。たとえ門を叩いたといっても、この家主である元柱殿にそれが通じるかどうか不安だな、なんて思いながら屋敷の中に入ろうとしたが、その心配も要らなかった。




「Aさん、お待ちいていました」




「千寿郎、くん」




煉獄さんの弟、煉獄千寿郎くんが出迎えてくれたのである。




「恋柱様の鎹烏から話は伺っていました。



『もうすぐでそっちに霊柱が来るだろうから屋敷の前で出迎えて欲しい』と」




(蜜璃ちゃん、ナイス)




気を利かせてくれた蜜璃ちゃんに心の中で感謝する。これで元柱殿に怒られる心配もなくなった。




「兄上に会いに来られたのですよね」




兄上の所まで案内しますね、なんて行ってくれた千寿郎くんの後に続いて屋敷の中を進む。





煉獄さんが居るとはまるで思えないくらい静かな屋敷。元柱殿、もとい煉獄さんの父上もいつも通りお酒を煽っているのだろうが、その気配さえ感じれないくらい閑散としていてどことなく焦ってしまう。




「千寿郎くん、煉獄さんの容態は……」



少し前を進む千寿郎くんに話しかけると、千寿郎くんは前を向いたまま話し始めた。




「先日目も覚めて、今は大分良くなっています。蟲柱さまも大丈夫そうだと仰っていましたし、今は家で安静にしているところです」




話し終えたところで、千寿郎くんはひとつの部屋の前で止まった。どうやらこの部屋の中に煉獄さんがいるらしい。



「どうぞゆっくり話していってください。兄上も、Aさんのことを心配していましたから」




その言葉にうなづいて、部屋の扉に手をかけた。

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あぶらげ(プロフ) - 黒豆粉さん» ありがとうございます!更新も遅れてしまいすみません (2019年11月30日 11時) (レス) id: 206dd23a10 (このIDを非表示/違反報告)
あぶらげ(プロフ) - りっつーさん» ありがとうございます! (2019年11月30日 11時) (レス) id: 206dd23a10 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - ナニコレ…好きッッッッッ!!!!、!!!!続きが気になる!!!!!更新頑張ってください!!!!応援しています! (2019年11月24日 18時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
りっつー - ヤバい、好きっす (2019年11月11日 16時) (レス) id: 8fa946d002 (このIDを非表示/違反報告)
あぶらげα(プロフ) - あかさたなさん» ありがとうございます!嬉しいです!! (2019年10月22日 0時) (レス) id: 768a447251 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あぶらげα | 作成日時:2019年9月22日 14時

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