廿肆話 ページ27
――玖ノ型・煉獄
――破壊殺・滅式
技を出そうと構えた煉獄と猗窩座は再び地面を蹴りだす。
(今度こそ、煉獄さんが.....!)
炭治郎が息を飲んだ、その時。
――霊の呼吸 壱ノ型・陰火
ボソッと呟く様な声と共に炭治郎の横を一瞬、微かな何かが通り過ぎる。静かで、冷たくて、それでもどこか優しさを含んだ炎の匂い。待ち望んだ“あの人”の匂い。
「Aさん!!」
土煙も消え、見えた幽門の姿。自分よりも一回り小さいその背中がどんなに頼もしく見えたことか。
「遅れてすみません、煉獄さん......!」
幽門はその端正な顔を申し訳なさそうに歪め、煉獄を背に猗窩座から距離を取る。
「煉獄さん、ここは私に任せて後ろで待機を。この近くで恋柱も任務にあたっていたはずなので、念のため応援要請もお願いします」
そう手早く要件を伝える幽門にいつもの可憐な少女の影は無い。そんな少女まで戦場に出ているのだと思うと煉獄は悲しくなるが、目の前に立つ少女もまた自分と同じ柱で、屈強な剣士なのだ。事実、自分もたった今助けられた。
「分かった」
何より自分を真っ直ぐに見つめろその瞳に、この子なら大丈夫と、そう思えてしまうのだ。
「その反応速度、研ぎ澄まされた太刀筋......お前も柱だな!!名は何という?」
「............」
「だんまりか、まあいい。お前も鬼になれ!!」
その言葉には答えず、Aは次の技の構えをとる。
――霊の呼吸は騙し討ちに特化した呼吸だ。気配の薄いAにしかできない呼吸。自らの姿を相手に悟らせず、音も気配もなく首を狩り取る。
そのため、正面戦闘、一騎打ちというのはAがもっとも苦手とする戦いだった。霊の呼吸の中で最も速い壱の型も防がれてしまった。上弦の鬼と戦うというのは、そういうことなのだ。
しかしここで折れてはいけない。ここで折れてしまっては、煉獄さんが満身創痍で守ったものも、自分が今まで信じて進んできた道も、全てが無駄になってしまう。
(それだけは、絶対に駄目だ)
呼吸を整え、一気に猗窩座と距離を詰める。
――弐ノ型・風玉
周りにゆらゆらと炎が浮かぶAを中心に、暴風が吹き荒れる。
「私は柱、霊柱だ。私の愛する鬼殺隊のためにも、ここまで引き継いでくれた煉獄さんのためにも、必ずお前の首を取る......!」
夜明けは近い。
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あぶらげ(プロフ) - 黒豆粉さん» ありがとうございます!更新も遅れてしまいすみません (2019年11月30日 11時) (レス) id: 206dd23a10 (このIDを非表示/違反報告)
あぶらげ(プロフ) - りっつーさん» ありがとうございます! (2019年11月30日 11時) (レス) id: 206dd23a10 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - ナニコレ…好きッッッッッ!!!!、!!!!続きが気になる!!!!!更新頑張ってください!!!!応援しています! (2019年11月24日 18時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
りっつー - ヤバい、好きっす (2019年11月11日 16時) (レス) id: 8fa946d002 (このIDを非表示/違反報告)
あぶらげα(プロフ) - あかさたなさん» ありがとうございます!嬉しいです!! (2019年10月22日 0時) (レス) id: 768a447251 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あぶらげα | 作成日時:2019年9月22日 14時