廿話 ページ23
私は4人姉妹の末っ子だった。3人の姉のうち2人は嫁に出ていて、この家には父さんと母さん、それから姉妹で一番上の咲子姉さんの4人で暮らしていた。
咲子姉さんは目が見えなかった。なんでも幼い時に高い熱がでて、それ以降見えなくなってしまったそうだ。そのせいもあってか、中々嫁の貰い手がみつからない。下2人の姉はもう嫁いでしまってとても辛いはずなのに、いつも笑顔で優しく接してくれるのだ。
いつも優しい本当に素敵な姉。世の男は本当に見る目がないと思う。まあ、貰われてしまっては私が困るから誰にもこの優しさを教えてやらない。というか教えるような相手もいないのだけれどーー
「おいで、A」
「うぅ、姉さ、咲子姉さん……!」
そっと手を広げた咲子姉さんの胸に思いきり飛びつく。
辛かったね、頑張ったね、なんて言いながら私の頭を優しく撫ででくれる姉さん。その温かさに、我慢しなくちゃいけないはずの涙がどんどん溢れてくる。
「うぅ、ひっく、姉さん、姉さん。
私本当にダメなの。強くあらなきゃいけないはずなのに、どうしても涙が止まらないんだよ。
私より辛い思いをしている人なんて、たくさんいるっていうのにーー」
「A」
姉さんは頭を撫でる手は止めずに、私の言葉を優しく制した。
「A、よく聞いて。確かにAより辛い思いをしている人だってたくさんいるわ。
でもね、世界で1番辛い人しか泣いちゃいけないなんて決まり、どこにもないのよ。たとえ世界で1番辛くなくたって、泣いていいの。助けてって言っていいんだよ。
だって人はひとりじゃ生きていけない生き物なんだからね」
その言葉にどんなに救われたことか。
私は今まで抑え込んでいた泣き声なんかを気にせずに、姉さんに泣きすがった。
「うわぁあん!聞いて、姉さん!
私ね、すっごく辛かったの、苦しかったんだよ。
皆と同じようにしなきゃって思うのに、どうしてもできない。上手く話すことができなくて、明るく振る舞えなくて、どうしたらいいか分からなかったの」
私の話を姉さんは最後まで黙って聞いてくれた。咲子姉さんの胸は本当に温かくって優しくって。気づけば、あんなに酷かったはずの涙も嗚咽も収まっていた。
姉さんは私が落ち着いたのが分かると、さあ部屋に戻ろう、と優しく笑った。
「咲子姉さん、ありがと。
私姉さんのことが本当に大好きだよ」
「うん、私もよ。A」
そう言って笑う姉さんはどこまでも綺麗で温かい。
ああ、もうほんとーー
(幸せ、だなあ)
1022人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あぶらげ(プロフ) - 黒豆粉さん» ありがとうございます!更新も遅れてしまいすみません (2019年11月30日 11時) (レス) id: 206dd23a10 (このIDを非表示/違反報告)
あぶらげ(プロフ) - りっつーさん» ありがとうございます! (2019年11月30日 11時) (レス) id: 206dd23a10 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - ナニコレ…好きッッッッッ!!!!、!!!!続きが気になる!!!!!更新頑張ってください!!!!応援しています! (2019年11月24日 18時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
りっつー - ヤバい、好きっす (2019年11月11日 16時) (レス) id: 8fa946d002 (このIDを非表示/違反報告)
あぶらげα(プロフ) - あかさたなさん» ありがとうございます!嬉しいです!! (2019年10月22日 0時) (レス) id: 768a447251 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あぶらげα | 作成日時:2019年9月22日 14時