拾玖話 ページ22
(あれ?私今まで何をして……?)
辺りを見渡すと見慣れた学校の教室に、帰り支度を整えている生徒の姿。
(ああ、そうだ。授業が終わって……もう帰らなきゃ)
周りの生徒と同じように帰り支度を始めると、後ろからくすっと嘲笑する声が聞こえて思わず手を止める。
「幽門さんまた1人だよ。可哀想」
「仕方ないよ。だってあの子いっつも静かで気味が悪いもの、まるで幽霊ね。
あんまり見てると呪われちゃうかもよ?」
「ひゃあ、こわ〜い」
(誰が幽霊だよ、ばかやろう)
ああ、ダメだダメだ、いつものことじゃないか。いちいち気にしていたらかなわない。早く帰ろう。
荷物を入れ終えた鞄を背負い、教室を出ようとするが、それも叶わない。扉付近で突然前に出された足につまずき、前に倒れる。
「…………!」
転んだ拍子に鞄の中身が無惨に散らばる。ああ、折角仕舞ったのに。
思わず拳に力が入ると、それをからかうかのように今度は男子の声が聞こえた。
「ひゃーこわいこわい、幽門が怒ったぞー!」
「あはは、呪われちまうぞ、逃げろー!!」
その掛け声を合図に、生徒がわぁっと教室から出ていく。私を気遣ってくれる子は、1人もいない。
(我慢、我慢だ。いつものことじゃないか)
そう、いつものことなんだ。
いつも静かで人見知りな私には、勿論友達がいない。それどころか声も小さくて気配も薄くて不気味なものだから、学級の生徒からは気味悪がられていた。
仕方がない。そんな生徒、私だって気味悪がる。
(我慢、我慢だ)
前に本で読んだ。この世には、学校にも通えなければ家族もいなくて、毎日食べ物に困っている、生きたくても生きられない人達がいるのだと。
それに比べて私はどうだ。毎日学校に通わせてもらっているし、家族に、美味しいご飯だって食べさせて貰っている。だからダメだ、こんなところで弱音を吐いていては。
父さんも言っていたじゃないか、強い女になれ、と。男尊女卑のこの時代でも強く生きれるようにとわざわざ学校に通わせてくれているんだ。その期待にも応えなくちゃ。
だから、だからーー
「ぅぐっ……ひっく」
泣いちゃダメなんだ。私より辛い人なんて、たくさんいるんだから。
帰ってきた格好のまま家の玄関で嗚咽を溢す。
(なんで、なんで?泣いちゃダメなのに……!)
止めようにも一度出た涙は止まらない。暫く泣いていると、ふと目の前に気配を感じた。そこには
「A、泣いているの……?」
「咲子、姉さん」
私の大好きな姉の姿があった。
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あぶらげ(プロフ) - 黒豆粉さん» ありがとうございます!更新も遅れてしまいすみません (2019年11月30日 11時) (レス) id: 206dd23a10 (このIDを非表示/違反報告)
あぶらげ(プロフ) - りっつーさん» ありがとうございます! (2019年11月30日 11時) (レス) id: 206dd23a10 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - ナニコレ…好きッッッッッ!!!!、!!!!続きが気になる!!!!!更新頑張ってください!!!!応援しています! (2019年11月24日 18時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
りっつー - ヤバい、好きっす (2019年11月11日 16時) (レス) id: 8fa946d002 (このIDを非表示/違反報告)
あぶらげα(プロフ) - あかさたなさん» ありがとうございます!嬉しいです!! (2019年10月22日 0時) (レス) id: 768a447251 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あぶらげα | 作成日時:2019年9月22日 14時