雪 に 願 い を 《 桃 》

僕 の 涙 誘 っ た ページ31

藤 井 s i d e



Aちゃんの、あまりにも苦しい過去を知り、思い切って聞いてしまった望の気持ち。

俺らがデビューしてからは、望の口からAちゃんの名前を聞くことは少なくなった。


Aちゃんに振られたあの頃の望は、こっちが見てられへんほどに落ち込んで、心にぽっかりと穴が空いたように、ずっと上の空やった。

そんな中、起こった奇跡。


俺は、Aちゃんが楽屋で挨拶をした瞬間、思った。「もしかしたら、またあの頃の2人が見れるかもしれへん」って。


やけど…2人の間にある溝は、2人が思えば思うほど、遠ざかって行ってしまうような深いものやった。

他の誰にも解決出来ない、青春時代を引きずって出来た2人の溝。
2人の気持ちがぶつかり合えば、上手い事いくはずやのに、行動に移すことが出来ない2人。


たった一つの出来事が、こんなにも2人を苦しめるとは、あの頃の俺も思ってなかった。



望の為に身を引き、望を応援し続けるAちゃん。

そのAちゃんの応援を背負い、進み続ける望。


決して交わることのない2人の想いが、余計に2人を苦しめた。
「誰も悪くない。」そう、わかってても自分を責めてしまう2人はきっと……



純粋で若かったあの頃のまま、大人へと成長した子供や。



「上手く、いくとええな……」ﾎﾞｿｯ



俺は、そんな思いを胸に、望の背中を見つめた。

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