おいで、恋愛しようか『LIP×LIP短編集』

キャパオーバーは突然に。『愛蔵』 ページ22

ビックリした....停電かぁ.......




「もー....心臓に悪いなあ......」




涙も泣く気も失せてしまった






取り合えずスマホ探そうと部屋を見回すと









ｶﾞﾀ........





「！？」







部屋に、風が吹き込んできた






さっきの物音はどうやら窓があいてしまったようで








窓を見ると









.









「やっほ」



月の逆光で顔が見えないが、人が、窓に腰かけていた



.......ん？心なしか猫のシルエットも見える気がする









風ではためくカーテン。後ろからの月光で、夜にも勝る輝きを放っている金髪___________





「(あれ、この声.........)」





考えるよりも先に。さっきよりも大粒の涙が頬を滑っていく





「あれ.......」









手のひらで受け取っていると、窓に座っている人がクッと笑った






「なんだ、まだ泣き虫なの変わってないんだ」






窓から体を離し、此方へ歩いてくる




影から外れて徐々に見えてくるその人の姿。それは紛れもなく









「愛蔵........」





もう何年も会っていない彼だった








「......久しぶり。A」





私を呼んでくれる声が嬉しくて。愛蔵にキツく抱き付いた






「あいぞ......愛蔵。......会いたか......っ......」







彼は微笑むと私よりも強い力で抱き締め返してくれる





息苦しいのも、今は嬉しい





「ごめん。何年も会いに行けなくて」







笑いながら、でも悲しそうに。そんな複雑な顔をした愛蔵がキスして。とでも言うかのように目を閉じた





今日くらいキスしてやろうと思い顔を近付けると.......









「ニャー！」



「っえ！？...............あ、クロちゃん！！」





いきなり私の足に猫パンチをかました柴崎家のクロちゃん。愛蔵に着いてきたようだ





ひょい、と抱き上げると愛蔵がﾑｯとした顔をする





そのままよしよしと撫でているといきなり唇をﾍﾟﾛｯと舐められた





その瞬間、愛蔵から殺気がブワッときた。ブワッと









「っ...く.....クロ...！！」


「ぇ、ちょ、ま、待って落ち着いて愛蔵！！」






「何で久しぶりの再開のキスが俺じゃなくてクロなんだよ！！！」









ーーーーーーーーーーー





「ｯは........愛蔵...息.........ん」





「久しぶりなんだからいいだろ？..........可愛い」

エレジーは届かない『勇次郎』→←キャパオーバーは突然に『愛蔵』

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す