期末試験 ページ43
◇
「来週からテストだが、
赤点とったら合宿は参加出来ないからな」
次の大会に向けたミーティング中、コーチの一言によってそういえばそんなルールあったっけと音駒ルールを思い出す。
「赤点って平均点の半分ですよね？」
「うん。でも高くても30点くらいだから
あんまりとる人いないと思うけど」
部内でも一番心配のなさそうな球彦に笑いかけながら、私は問題の一、二年に視線を移す。
「山本さんは大丈夫なんですか？」
「よくぞ聞いてくれた1年。
俺はまだ！一度も赤点をとったことがない！」
いつも平均点と赤点の間を気持ち悪いくらい正確にとる虎が後輩たちに胸を張って答えると、万年40点が威張るな！と夜久から鋭い指摘を受け、球彦からは意外ですねと言葉の刃物が飛んでくる。
わいわいとそれぞれがテストの話題で盛り上がる。
しかし、そんな満点の笑顔のリエーフの一言によって、その空間は引き裂かれた。
「赤点ってなんですか？」
リエーフの横で、数学も国語も30点以上とったことないです…と分かりやすく狼狽え始める走に、ぽわぽわとお花を飛ばすリエーフが20点とれるって普通にすごいじゃん！と笑う。
私たち三年の中に赤点をとる心配の者はいないが、うちの部の一、二年はとにかくやばい。
去年で分かっていることとしては、福永は得意教科と苦手教科の偏りがすごくて、たまに興味なかったという理由だけで赤点をとることがある。
研磨はだいたい平均点キープだが、新発売のゲームが出てしまえば、おしまい。
これだけでも大変なのに、今年はリエーフと走がいる。
「「「やばい」」」
何とかしなければと夜久と海、そして黒尾と私で目配せし合ったあと、私は早々に面倒見のいい優生の所へ行って、一年二人組にとにかく基礎から教えてあげて欲しいとお願いする。
「そうですね…僕ちょっとしたテスト作ってきます！」
「ありがとう優生〜！もちろん球彦も協力してね」
「え。」
優等生二人がマンツーマンで勉強を教えてあげれば…とこちらで作戦を立てる中、問題児たちにまさか授業は起きてるんだろうな？と笑ってキレる夜久。
震えあがるリエーフと走の横では、海が2年生達にちゃんと勉強しろよと忠告しており、突如パンっと手を叩く音が後ろから聞こえると、全員落ち着けと黒尾が冷静に口を開いた。
「…いいかお前ら。明日から部活の後は勉強会だ」
◇
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作者名：西川あや | 作成日時：2022年10月7日 1時
