進路 ページ33
◇
「お前、今日ずっと上の空だな」
「…え？」
ハッとして顔をあげれば、違うクラスの黒尾が私を見下ろして立っている。
焦って周りを見ると、クラスの女子たちが楽しそうにお弁当を広げる姿があり、いつの間にか授業は終わっていることに気がついた。
ごめん何か用だった？と急いで聞き返せば、部活の連絡しに来たと言う黒尾が、呆れ顔で私の腕の下に敷かれた授業のプリントをスっと抜き取る。
やばい、名前すら書いてない。
「ちょ、待って！」
こんな物を見られたら馬鹿にされるに違いないと、急いで紙を取り戻そうと手を伸ばすが、じっとプリントを見て私に視線を移す黒尾は、なんだか心配そうな顔をしていた。
「熱か…？」
学校では優等生ぶってるのに白紙なんて…と、私のおでこに手を当て、自分のおでこの熱さと比較する黒尾は、別に熱はないなと安心したように手を下ろす。
「ちょっと進路のこと考えてただけ、」
「あぁナルホド。今日か、個人面談」
「個人面談？」
私まだ当分先じゃなかったっけ…？と後ろの黒板に書いてあるメモを恐る恐る確認すると、生物室 昼休み 一条 と私の名前がしっかり書いてあった。
◇
急いで担任の待つ生物室に行くと、既に資料を準備して万全の状態で待つ先生は、早く座るよう私に催促する。
「…一条は大学進学か」
「はい」
以前書かされた進路希望の紙を見て、納得したように頷く先生は、少し唸るような声を出すと、真剣な表情で今から大事な話をすると前置きをする。
「全体的に成績は良い」
英語は特に得意な方だから語学に優れた大学に行くことを視野に入れても、十分問題は無いということを丁寧に説明し終えると、少し眉間に皺を寄せて、でもな…と小さく呟く。
「受験勉強をしながら部活を続けるのは
きっと凄く、一条にとって過酷な道になる」
マネージャーを続けたいと話したことを覚えていたのか、そう顔を顰めて話す先生は、これからの勉強次第で上の大学を狙えると、これまでの成績表を用いてしっかり説明をした。
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作者名：西川あや | 作成日時：2022年10月7日 1時
