鼬 ページ31
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じっと見つめ合うこと数秒、佐久早ぁ！と先程の子が痺れを切らしたように大きな声で呼びかける。
「…試合、見ててください」
そう一言、澄んだ瞳でこちらを見る佐久早くんは、そりゃもちろん！応援してるよと笑い返す私を見るや否や、とても足早に歩き出す。
「…」
わざわざ当たり前のことを聞く佐久早くんを少しおかしく思いながら、私が向かう場所がもうコートではなく、観客席であることにとても悔しさを感じた。
◇◇
「どこまで飲み物買いにいってんたんだよ」
私が観客席へ戻ると、のんびり頬杖をつきながら、もう試合はじるぞと夜久が文句を垂れる。
「ちょっと下で知り合いに会ったの」
「ふーん」
せっかく律儀に答えたのに対し、なぜかツンケンした態度をとられた私は、夜久の態度を不服に思いながら海の隣に腰を下ろした。
「こんな態度だけど、
また誰かに絡まれてるんじゃないかって心配してたんだ」
そうコソッと教えてくれる海に、相変わらず夜久ってば素直じゃないなあと可愛く思っていれば、前の方に研磨と座っていた黒尾がこちらを振り返る。
「このAブロック最後の試合で、ベスト4が出揃うぞ」
春高予選を抜け、全国へ行くためには、今残っているチームを倒さなければいけないと、表情を引き締めて話す黒尾にみんなは力強く頷いた。
◇
私も部活引退の最後の日まで、全力でみんなを支えよう。
そう意気込んでいた私だったが、大会明け早々、思ってもみない悩みが舞い込むことになる。
◇◇
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作者名：西川あや | 作成日時：2022年10月7日 1時
