IH ページ27
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誰も話さないこと数十分、それぞれ他校の試合を観戦したり、軽くストレッチをしたりと好きなことをして時間を過ごしていた。
私はというと、先程の試合のメモをまとめながら、三脚で撮っていた動画がきちんと撮れているか、ミーティングのまでに使えるようにチェックする。
「あれ…」
「どうした？」
独り言のつもりで言ったため驚いて横をむくと、いつのまにか一緒に動画を見ていたらしい夜久が不思議そうに私を見つめる。
…気のせいかもしれないんだけど、走が前衛のときブロックしづらそうだなって思ってと自信なさげに口に出せば、あぁと納得したように頷いた。
「この7番ミドルが左利きだから」
サウスポーと練習する機会も少なかったし、相手が場馴れしている分、犬岡がキツい場面が多かったと、画面を指さしながら説明してくれる。
これに関してはリエーフも練習が必要だなと呟く夜久に対して、ブロッカーだけの問題じゃなくてレシーバーとの連携も重要だと話に入ってきた黒尾は、帰ったら新しい練習メニューを考えようと画面から私たちの方へ視線を移した。
「A、外から見ててどうだった？」
「ミス自体はそんなに多くなかったよ
ただ、流れを掴まなきゃいけない時のミスが目立ってた」
あとで動画は見せるけど、1セット目の中盤とかねと試合中にとったメモを見ながら話すと、だよなー…とあからさまに反省の色を見せる3人。
でも、今回で課題が浮き彫りになったし良い試合だったんじゃないかなと笑えば、ソウデスネと頬杖をつきながら黒尾が頷いた。
「まあマジな話、全国は遠いって実感させられた」
結果としてはベスト8と好成績かもしれないが、上位3位までしか全国に行く事は出来ない。
「春高、か…」
もちろん私は下にマネージャーもいないし、全国に行くとみんなと約束した日から残るつもりでいた。
どうなんだろう。当然みんなも残るものと思っていたからわざわざ話したこともなかったけど、進路のこともあるため考えが変わっていてもおかしくない。
「…」
そんな私の思いが伝わったのか否か、ハーっと大きめなため息が聞こえると、黒尾はわざとらしく咳払いをしてゆっくりと話を切り出した。
「…あのさ、ここで話すのもアレなんだけど
お前らはどうする？ 引退」
◇
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作者名：西川あや | 作成日時：2022年10月7日 1時
