IH ページ25
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そして始まった、清風高校との試合。
「山本ナイスキー！」
現在1セット目の中盤だが、去年インターハイ優勝の高校に見事食らいついている音駒。
毎度一点とって同点になっては、また一点リードされるという両校ともに苦しい展開が続いており、この流れが崩れた瞬間、どちらかの勝ちが遠のくことを全員が自覚している。
「4番サーブ」
「一本とるぞ！」
そうコート内で声をかける黒尾たちはとても集中していて、頼もしい先輩になったなと関心すると同時に、相手のサーバーに目を向ける。
今大会の都内の予選でも注目を浴びる清風の4番。
去年、彼が一年生の時の春高予選で見た時は、ただのオーバーサーブであったが、これまでのローテを見ている限り、数ヶ月かけて仕上げたジャンプサーブは付け焼き刃ではない。
「一本目、浅いの気をつけて！」
ホイッスルがなったあと、コート内のメンバーにすぐに呼びかけ、ペンを握る手に力が入る。
みんなで調べた4番の研究では、試合が接戦になって前のめりになるほど、ネット際ぎりぎりを責めたふわっとしたボールを打ちたがる。
力の入った体ではなかなか球の落下地点まで足が動かないため、小賢しく堅実な方法ではあるが、知っていればチャンスボールだ。
サービスエスでブレイクだけは避けたい…！
自然と指を組んで祈るように手を握っていれば、4番から放たれたボールは思った通りネット際に落ちてきた。
「ナイスレシーブ！」
「ラストー！」
前衛の虎が拾い、そのまま研磨から虎へと速いトスが上がると、相手のレシーブの陣営が乱れたまま、空いているコースに綺麗に決まった。
「とら！！すごいじゃん今の！！」
よく入ってきたぞ！とコート外から褒めちぎると、あからさまに照れ始めるのが遠くでもわかる。
その後、このまま流れを掴んだと思われた音駒だったが、全体的にいまいちサーブの成功率が悪く、1セット目は数点差で落とした。
コート交換中、サーブもっと練習な！と2年トリオの背中を叩いて励ます夜久が、今の状況でミスんの怖いだろうけど攻めろよと鬼のようなお題を課すのを耳にする。
「招平は特にのってくるといいサーブ打つからね」
ちょっとずつエンジンかけてくのがいいかもよと、話しながらタオルを渡してあげれば、小さく頷いてブンブン腕回しを始めた。
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作者名：西川あや | 作成日時：2022年10月7日 1時
