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第一波 ページ2

「…はい。では、その案は此方でも勘考させて頂きます」

チン、と受話器を置くと、浅野は今まで溜め込んでいた分の息を一度に長く吐いた。
くら、と一瞬平衡感覚が何かに襲われ、そのまま後ろの机にぶつかるようにもたれかかる。

連合国との和平交渉だ。
連合国に「参加」すれば戦争に参加する事になる。
それを避けるべく、なるべく中立に…とは言っても、「貴方方の味方にはなりませんが撃たないで下さい、放って置いてください」と言っているようなもの。
しかも、先の満州調査でイギリスとは対立のような関係にあるし、国際連盟からは脱盟してしまったし。

全く、前の首相は随分やらかしてくれたものだ。
目頭に指を押し当てて起きそうになる眩暈を耐えながら体勢を立て直す。
ふと、窓から見えた東京の景色に、「日本はこんなに長閑だが、その向こうでは銃弾と爆弾が飛び交っているのか」と改めて思った。

今度はいつ地元に帰れるだろうか、とも思った。

「首相」
扉の向こうから声が響いた。入れ、とだけ言うと、
見た目だけは二十代後半くらいの若い将校。
旧友の片岡である。
扉を開けるまでは良し、此方と視線がぶつかってから、片岡はぎょっと目を見開いた。

「首相!どうなされたんですか、その隈は!?」
開口一番、彼はやや声を荒げて言った。

そんなに酷いか、俺の顔は。
おろおろする片岡に内心でツッコミを入れつつ苦笑いした。

「さては一昨日(おとつい)の会議から眠ってらっしゃらないのでは?」
「その通りだ、見てみろ。明日の会議までにこの書類全てに目を通さなければいかん。」
「…今日も徹夜なされるので?」
「当たり前だろう。1時間2時間じゃ到底無理だ」

机に乗せられた厚さ20糎ある書類の山を叩いて見せると、片岡は「少し仮眠を取られては」と呟いた。
その凛々しく軍人らしい眉が心配そうに歪むのが可笑しくて、少し笑った。

忙しくても、旧友と話し笑えれば、彼はそれで充分であった。




いつからだろう。
これが、この時が、何者かの手によって…いや、もしかしたら、時代のせいかもしれなかった。



壊れ始めた。

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嵩画鯉城@トラ!トラ!トラ!(プロフ) - 月読命さん» ありがとうございます(o^^o) そうなんですね〜、死後百年ですか…この小説の舞台は若干微妙な年代なので、その辺り気を付けて書いていこうと思います。 (2017年10月6日 18時) (レス) id: 3ce9c05f06 (このIDを非表示/違反報告)
月読命 - 更新がんばってください!ちなみに歴史上の人物の場合、死後およそ100年で名前をかってに使われない権利みたいなのが消えるみたいです。 (2017年10月2日 20時) (レス) id: 3990fcd378 (このIDを非表示/違反報告)
蘭秀@ニイタカヤマノボレ(プロフ) - あんこ(ろ)餅さん» コメントありがとうございます。歴史上の人物を使用する場合はオリフラを外す必要はない、と聞いたのですが…。ちなみにww2の内容については実在する団体は一切使用しておりません。 (2017年6月19日 7時) (レス) id: c435ca72cc (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(ろ)餅 - これはオリジナルですか?実在する団体などを使用してる場合はオリジナルフラグを外してくださいね (2017年6月19日 7時) (レス) id: db0d61df1d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蘭秀、鯉城 x他1人 | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年6月11日 19時

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