└ 05 ページ45
これは前にも質問した事がある。不老不死の身体を手に入れておきながら、何故そうまでして死にたいのか。しかし、不老不死と言う人類の夢を叶えたこの男は「……それは依頼内容には入ってないよ?」と言って誤魔化した。ぽわぽわした雰囲気からは想像がつかない、実に小賢しい躱し方だった。
ロベルティーネは、それと同じ質問を夕食時に不意打ちを食らわせるが如くメルヴィンに振ったのだが、彼は考える素振りすら見せず、「話す機会があったら、いずれ」と避けたのだ。勿論、何故と返したのだが、彼は頑なに口を割らなかった。
(身辺を知ってても、心境を知らなきゃ親友も糞もない気がするがな)
お陰で寝不足気味の頭で昨日の事を思い出して居ると、シャルロは「明日、槍でも降るのかな」と冗談混じりに摩訶不思議な青年に目を向けた。槍が降って堪るか。
ぐらぐらと煮込んだスープから美味しそうな匂いが漂ってきた所で、これまたキッチンから持ってきた木製のコップ二つにスープを注ぐ。その内一つのコップを地面から盛り上がった少し平らな岩の上に置くと、ロベルティーネはもう片方のコップとパンを片手に食事をし始めた。それを見たシャルロはドン引きした様子で、岩に置かれたコップを見つめる。
「お客さんにそれ出すの? 悪趣味かよ……」
「お前に言われたくない」
「だって、燃料アレだよね。誰かの…………はぁ、幾ら何でも図太過ぎるでしょ、お前」
「彼奴程ではない」
もぐもぐとスープとパンを口に放り込む彼女はチラリとメルヴィンを見る。殺し屋と対面しても尚ヘラヘラ笑いながら接触してきた、図太い神経処か、図々しい程に鈍感な彼は絵を描く事を止め、笑顔で花と会話して居た。本当に、何もかもが理解出来ない規格外にして予想外な男だ。
──それでも、私はいつも通りに過ごせば良い。
少しだけ亀裂の入った二つ名とプライドを抱え、スープを一気に飲み干した。
二人の邂逅によって回り出した歯車は着実に、理想と現実の境界線を、絵筆で色をかき混ぜる様に淡くしていった。
第I部「邂逅する怪奇」 終
Next story……?
9人がお気に入り
「オリジナル」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
十二月三十一日(プロフ) - づみさん» 有難う御座います。読んで頂き光栄です。更新頑張りますので、今後共宜しくお願いします。 (2018年3月3日 2時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
づみ(プロフ) - お話がとても好きです、更新たのしみにしています。頑張ってください〜 (2018年3月2日 16時) (レス) id: 688586594f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:十二月三十一日 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年1月18日 21時