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他にもかくにも、青年の遺体を処理に関しては困っている事は確かだった。理由は幾つもあるが、その中でロベルティーネが処理を躊躇う一番の理由は、“自分が殺していない遺体をどうすれば良いのか”である。このまま自分が処理しても構わないが、警察が必死の捜査でも見つけられなかった犯人を情報として提供した方が都合が良い事もあるが、しかし、余りにも惨い死に方をしているので、逆に事件として取り上げられる可能性が無きにしもあらずと言った所でもある。
 又、敢えて処理せず、教会の方で埋葬する方法もあるが、汚れた道路や不審な二人組が男を抱えながら教会へ向かった等の目撃証言が露見すれば、不審がられるに決まっているので、それだけは避けなければならない。それだけ、この遺体には影響力があると言って良い。
 霧が晴れた今、此処を誰が通り掛かっても可笑しくないので、早急な決断が迫られている。警察に情報提供するか、それとも自分で処理するか、埋葬するか。否、もう一つの方法として、死体回収屋のハザマを呼ぶ手もあるか等と、選べぬ手段が増えていく脳内を他所に時間は過ぎて行く──

「あら、遅かったかしら」

 二人が来た道の方角から女性の声が聞こえ、反射的にナイフを取り出すロベルティーネの眼前には、伯爵夫人風の服を着た女が優雅に歩いていた。
 紫色のバッスルドレスに赤と青の大振りの石が揺れるピアス、レースがあしらわれた日傘を片手に、銀色の長い髪が美しく靡く。恐ろしく整った顔には妖艶な笑みが浮かべられている。
 同じ女から見ても美しいと思える女は、青年の遺体まで足を運ぶと、手が血液で汚れてしまう事も厭わず、ぐちゃぐちゃになった青年の顔を撫でた。ロベルティーネはこの様子を訝しげに見る。だが、それとは又違う反応を見せる人物が一人居た。ずっと遺体の側に居たメルヴィンである。

「……魔女」
「え」
「フフ。久しぶりね、坊や」

 女は美しく笑うと、血の付いた手を宙に翳すと、見る見る内に付着していた血液が消えて行く。その様子はまるで魔法のそれだ。

「アンタが……」
「レディがそんな野蛮な言葉を使ってはいけないわ。美しい言葉遣いを心掛けなさい」

 ロベルティーネの言葉遣いを指摘すると、女は再び笑った。それは正しく魔女の笑みだ。
 運命は、着実に二人を取り巻く環境を変えて行く。生前とはすっかり変わり果てた青年の姿の様に目紛しく、色を変える万華鏡の様に華やかに。

◆第IV章「魔女の棲家」 01→←├ 09



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十二月三十一日(プロフ) - づみさん» 有難う御座います。読んで頂き光栄です。更新頑張りますので、今後共宜しくお願いします。 (2018年3月3日 2時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
づみ(プロフ) - お話がとても好きです、更新たのしみにしています。頑張ってください〜 (2018年3月2日 16時) (レス) id: 688586594f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:十二月三十一日 | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年1月18日 21時

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