├ 07 ページ20
端麗な容姿に伴い、物腰の柔らかさや丁寧さ故に、ホテルの利用者からの評判は頗る良い。勿論、ジャルドーレ通りに住むおばさま達にも人気があるが、外見の若々しさとは裏腹に、彼の年齢は現在三十五歳──蛇足だが、この年齢になっても彼には婚約者はおろか、恋人も居ない──である。
だが、周りからの評価とは一変して、ロベルティーネは彼の事が苦手だった。何処か回りくどい口調から、先程の様に突然背後に立たれる等、本当は裏の人間なのではと疑いたくなる程の振る舞いをしてくるので、表の世界で生きる人々が行き交うこんなにも明るい広場に居ても、心が全く休まらないのだ。背後を取られるなんて殺し屋も形無しなのだが、彼女はけして油断をしている訳ではない。常に後ろも警戒しているし、寝ている時だって注意は怠ってはいなかった。そんな中でもダンテは必ず背後を取ってくるので、最早凄いのは彼になるのだが──こんな事で議論をしても埒があかないので、次に進もう。
ダンテは彼女の隣で首を傾げるメルヴィンに目線を移す。見慣れない服装に、物珍しい容姿に少しだけ興味を持った様子で、「彼は?」と問う。
しかし、ロベルティーネはその質問に言葉を詰まらせた。「吸血鬼なんです」とも「裏稼業の依頼人です」とも言えない──彼女は殺し屋である事を隠している訳ではないが、都市伝説と化した今の状況を説明した所で信用はしてもらえない上、万が一にも一般市民を裏の世界に巻き込む事はあまりしたく無いので、只言わないだけである──ので、どうしたものかと頭を抱えると、突然肩にずっしりと重みが加わった。何事かと横を向けば、メルヴィンが彼女と肩を組んで、人懐っこい笑みを浮かべながら口を開く。
「ロベルの親友やってる、メルヴィンって言います」
「宜しくね」とお茶目にウインクをしながら、彼は自己紹介を終了させる。ダンテは動じた様子も無く、一言「宜しくお願いします」と返答した。
一方、ロベルティーネは気安く肩を組まれ、更には軽々しく“ロベル”と呼ばれ、それはそれは彼女の気に触れる物があったが、これによって上手く誤魔化せたのも事実なので、此処は辛抱して大人しくする。
「私はダンテ・ルリエールと申します。以後、お見知り置きを」
彼女の心情はつゆ知らず、ダンテは自己紹介をし返す。薄い微笑みとフレンドリーな笑顔、相反する表情が互いに向き合って笑い合う。両者の関係性は、側から見ても良い物には見えなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 9人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「オリジナル」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
十二月三十一日(プロフ) - づみさん» 有難う御座います。読んで頂き光栄です。更新頑張りますので、今後共宜しくお願いします。 (2018年3月3日 2時) (
レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
づみ(プロフ) - お話がとても好きです、更新たのしみにしています。頑張ってください〜 (2018年3月2日 16時) (レス) id: 688586594f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：十二月三十一日 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年1月18日 21時
