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「……それは依頼内容には入ってないよ?」
小賢しい事に、黙秘権を行使してきた。恐らくは言いたくないのだろう。誰にだって心の何処かに疚しい秘め事を持って居て、化け物になったメルヴィンも例外無くそれがあった。 思えば、彼が何故呪いを掛けられたのかも分からない。もしかしなくとも、それに関係している事には間違いないだろう。あくまで推測であり、根掘り葉掘り聞く気にもならない、上っ面の疑問を口にしたロベルティーネは随分とあっさり身を引いた。自分は探偵でも何でもない赤の他人、依頼を受けた只の殺し屋に、彼のプライベートを侵害する権利はない。理解出来なくても良い、だってすぐに居なくなる存在──既に彼は吸血鬼と言う理解出来ない存在になってはいるが──の心中を理解した所で何になるのか。友人ではないのだから、線引きはしっかりしなければならない。
今は彼の言う噂の範疇にしかない情報を頼りに聞き込みに行かなければならない。それならば、話の発信元となったジャルドーレ通りに向かうのが懸命だ。此処はジャルドーレ通りの外れにある教会だが、厳密に言えばジャルドーレ通りとは言えない場所にある。人が来ない、林の中にあるこんな場所にジャルドーレ通りの話は滅多に入って来ないので、一々その通りに出ないと話が始まらないのだ。
ぐう〜と見計らったかの様なタイミングで、腹の虫が鳴く音が聞こえた。勿論、先程まで食事をして居たロベルティーネの物ではない。彼女の目の前にいるアホ面の男である。
「……血はやらねぇぞ」
「大丈夫、普通にお腹が空いただけ」
「は?」
「そのパン食べて良い?」
メルヴィンはロベルティーネの横に食べかけで放置されていたハンカチに包まったパンを指差す。一度口を付けていた物なので、彼女は一瞬嫌な表情を見せたが、この男の為に料理を作ってやる義理もないので、ハンカチごとパンを渡した。嬉しそうにそれを頬張る彼の姿を見て、彼女は一言呟く。
「やっぱり、吸血鬼なんて嘘だろ」
「嘘じゃない、吸血鬼だって」
＊＊＊
──「ジャルドーレ通りは夢を見ている」と、昔、此処を訪れた旅人が言ったらしい。それがどう言う事なのか、どう言った意味として言われたのかは定かじゃないし、人によって其々解釈も違う。現実主義のロベルティーネは、その言葉に特に興味が無く、なんだか浮き足立ったその言葉に対し共感もしない。しかし、理想主義のメルヴィンは逆に素敵な言葉だと思っているらしかった。
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十二月三十一日(プロフ) - づみさん» 有難う御座います。読んで頂き光栄です。更新頑張りますので、今後共宜しくお願いします。 (2018年3月3日 2時) (
レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
づみ(プロフ) - お話がとても好きです、更新たのしみにしています。頑張ってください〜 (2018年3月2日 16時) (レス) id: 688586594f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：十二月三十一日 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年1月18日 21時
