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2,昔話2 ページ2

絶体絶命のその時だ。
一人の少女がイザナギを庇うように躍り出て、オロチの前に立ちはだかった。
闇の中で薄っすら光を帯びた白い髪、それは神木村外れに住み着いていたあの白野威だ。
白野威が獣の姿になり、牙を剥いてオロチに飛び掛ると、オロチを八本の首をもたげて喰らい付く。
二匹の人ならぬ物はもつれ合うように猛然と争い始めた。
…だがその戦いは何とも不思議な光景だった。
オロチが白野威に向かって火を吐くと突風が吹いてこれを押し返し、オロチの鋭い牙が白野威に迫ると、突然大木が生えてこれを遮った。
不思議な力に守られてオロチと互角に戦う白野威。
だが…、それでもオロチの力には敵わない。
白野威は全身に傷を負い白い毛並みは真っ赤に染まっていた。
白野威は疲れ果てもはや立っているのがやっとだった。
オロチの牙がふらつく白野威を追い詰める。
それでも白野威はオロチに背を向けず、最後の力を振り絞り天に向かって遠吠えをした。
すると…空を覆っていた暗雲が忽ち消え失せ、月明かりを浴びたイザナギの剣が金色の光に輝き始めたのだ。
それまで岩陰で機会を伺っていたイザナギは、剣に導かれるように立ち上がった。
そして傷だらけの両腕に最後の力を込めると、オロチに向かって猛然と飛び掛って行ったのだ。
イザナギの手の中で踊るように翻る金色の剣。
その眩い光が煌くたびにオロチの首は次々と宙に舞い、ついにこの怪物は自らの血だまりの上に崩れ落ちた。
長年村人を苦しめた元凶が最後を迎えた瞬間だった。
…戦いが終わった頃には辺りはすっかり白んでおった。
白野威はオロチの毒が全身に回って息も絶え絶えだったが、イザナギはそんな白野威を抱きかかえ村人の待つ神木村へと帰って行った。

村へ着く頃には白野威は自分で動く事も出来なんだ。
村人たちが見守る中村の長老が優しく頭を撫でてやると、白野威はそれに応えるように小さくワンと鳴き…、
…そして眠るように事切れたのだった。
…こうして神木村にやっと平穏な日々が訪れた。
村人たちは白野威の立派な働きを称え、村の静かな場所に社を建てそこに白野威の獣と人の姿の像を祀った。
…そしてイザナギの振るった剣を〈月呼〉と名付け、十六夜の祠に供えていつまでも平和を祈り続けたという。
永遠に変わらぬ平和な日々を…

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作者名:迦楼羅炎 x他1人 | 作成日時:2015年4月3日 22時

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