ひとりぼっちの人魚姫

望むのは ページ10

エ「ちょ...オイッ!! .....て...お前....」


膝上辺りまで水に浸かった私の脚は
キラキラと光を纏って尾鰭に変わる


『やっぱり 気付いてなかったんですね
隠すの 上手になっちゃったかな？ハハ...』


苦笑いをする私に今度は彼が問い掛ける


エ「隠してることは それだけか？」


『他にも いっぱい
いーっぱい ですよ笑』

エ「そぉか...ンで、何か望みがアんのか？」



小さく頷いた私は
真っ直ぐ彼の方を見ながら告げる


『私は....悪になりたい』

は?? と眉間に皺を寄せる彼に

そのまま続ける


『産まれた時から...
か どうかはわからないけれど笑
気付いたら変な力があったんです
怒ったり哀しんだりしてる時に歌を唄うと
命があるモノは全て その灯火を消してしまう
人間の姿にだって 簡単になれちゃう』

彼は何も言わず
ただ黙って私の話しを聞いている

『目も 光るんです
今は...たぶん青い?けど 力?魔力?を使う時だけ
金色に 光るんですよ 気持ち悪いでしょ苦笑
普通の人達にしてみたら そんな力
悪でしか無かった』


ずっと黙っていた彼が
溜め息と共に口を開く

エ「どーせ邪険にされるくらいなら
悪に堕ちちまおォってわけかァ？
いいのかァ？こっちの世界は
お前が思ってるより遥かに絶望的だァ
堕ちちまったら最期
もう戻れねェぞ？家族,友達,恋人...
全てを捨てなきゃならねェが...その覚悟は？」


『覚悟も何も 私には
家族も友人も...ましてや恋人なんていないもの
失うモノなんて 何もありません』


エ「そぉかよ笑 じゃぁ話が早い
連れてってやる アースラ様のところへ」


そう言うと、彼...エイトフットは
バシャバシャと
水に浸かる私の元へ近付いてくる

エ「nora 俺の目をよォく見てろ」

グッと 私の両肩を掴んだまま
真っ直ぐ見つめてくる目は
徐々に色を変え 金色に妖しく輝いた
それと同時にエイトフットの脚は
蛸足へと変化していく

エ「どぉだァ？
気持ちわりぃかよ俺の目は」

『とても...綺麗.....です』

エ「ﾌｯ....んじゃァおめェも一緒だなァ？」


ニヤリと笑うと 私の肩からスルリと手を降ろす

掛けられたことのないそんな一言に
涙が出そうになった...

この人は 本当に
あのアースラの手下なんだろうか？
本当にヴィランズなんだろうか？

そう思えるほどに
何処か優しさを感じた気がした



エ「オイ 行くぞ」

そう言って私の手を引くエイトフットの手は
海の水のように 冷たかった

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