Half step【3】 (ページ49)

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無事マンション内に入れたところで、大吾が振り返って待っていた。

それを私はありがとうと一言だけ伝えてエレベーターに向かう。

「ちょっと待って。なんも聞かんの？」

大吾が追いながら声をかける。

「もう、知らんよ。大吾も良規もこそこそ勝手にして。
なんなん？」

近くの階にいたエレベーターは私の想定よりも早く1階に到着する。

「…それはさ、正門と付き合う時点でわかってたことやろ。」

背後で言われたその言葉に、足が止まるくらいドキッとする。

数秒固まった後、かろうじて確認した大吾の顔は、冗談を言ってるようなものではなくて、なんで？とつい口走る。

「知ってたん…？…良規のこと、追っかけられてて、
…写真、わたしの、」

そこまで言うと、大吾はギュッと口を結ぶ。
綺麗な形の眉がぐっと下がる。

「良規も、知ってるん？」

「…わからん。」

「なら、絶対言わんといて。…謝るに決まってるから」

大吾のその顔は、良規が謝る時にする申し訳なさそうな顔とはちょっと違う。

なにかに耐えるような、身体のどこか痛むかのような顔だった。

「おかえり。仕事お疲れさま。」

久々に会った良規の髪は、いつ染めたのかすこし明るくなっていた。
目にかかりかけていた前髪も軽くなったような

「久しぶりやね。」

と言いながら彼と見つめ合ってる間に、持っていたバッグは良規の手に移っていて、

「手洗っといで。」

と、着ていたカーディガンの袖は捲られていて、仕事が早いとつい吹き出しそうになる。

「相変わらずラブラブやなぁ。」

本日の主役とたすきをかけた小島くんは、「やっば、あんなまっさん見たことないんやけど、」とか言いながらも、にやにやした顔で話しかけてくる。

「斗亜久しぶり」

「…あぁ、うん。」

小島くんを無視して隣の斗亜に話しかけると、斗亜は興味なさそうな返事をした。

「えなんで？怒らせた？」

「いや！なんで姉ちゃんやのにわからんわけ！？
照れてるんやんか、姉ちゃんと彼氏のラブラブなとこ見て。
なあ、斗亜？」

「…小島くん黙って！」

「えぇ？俺怒られたん今？」

怒られたくせにへらへら笑ってる小島くんを見て、堪えきれずに口から息が漏れた。

「はっは、小島ほんまアホやなぁ。」

同じタイミングで、隣に腰を下ろした彼からも声が聞こえてきて、安心した。