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夏が近づいてる大阪の街は、日が暮れてもまだジトッと肌にまとわりつく水分を含んでる気がする。
ようやく肌寒さを感じるようになった22時過ぎ
御堂筋もイルミネーションがないとただの大通り
彼と歩いたのは、冬真っ只中で
あの頃からずいぶん時間が過ぎた。
「良規のこと
…好きやったはずやのに。」
***
大吾Side
「良規の、ことがわからん。」
ぽつぽつ話し始めたAの声は、アスファルトの状況があまり良くないとこでは、はっきりとは聞こえへんほど小さい。
ところどころ、聞こえんところもある。
話すスピードがかなりゆっくりなんは、眠いからか?
「これまで良規のこと思って、不安にさせないように気をつけてたのに。
気づいたら、怒らせてて。」
「良規のこと、受け入れられんくて。」
「もうどうしたらいいか、わからん。」
「ごめん。
こんなん言えるん、大吾だけ。」
そう言うと、しばし黙る。
ちらっと横を見ると、本当に寝たのかシートベルトに頭を預けていた。
数十分後、起きたらしいAは、自分の家に行くと思っていたらしい。
西野家に向かってると気づくと、少しソワソワしだした。
「おかんか斗亜に連絡しといて。
急やけど、泊まるって。」
「大吾も?…まさか帰るとか言わんよね?」
不安そうな顔。
子どもか、なんて喉まで出かかった言葉をぐっと堪える。
「…お前は良くて俺はあかんの?
家族やのに?」
「え、…いや大丈夫!
いつでも来たらええよ。斗亜もお父さんも喜ぶから。」
声がワントーン上がったAがオカンに電話しとる。
電話を終えても、その声のトーンのまま、話しかけてくる。
「今私、めちゃくちゃ嬉しい。
大吾が、家族やって言ってくれて。」
「……急になに?」
「大吾と家族になれてよかった。」
Aが意識ない間、ずっと考えとったけど、
結局俺は、Aにも正門にも、気が利いたこと言えへんことに気づいた。
「A?」
「なに?」
「前、お前が言っとった、バンドの再開やけど。
…絶対するから。」
「うん、」
「やから、
…それまでに、仲戻しとけよ?」
今日だけ、
やからな。
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みさき(プロフ) - こちらも一気に読みました!楽しませてもらってます。 (2021年3月18日 16時) (レス) id: 58a6144e55 (このIDを非表示/違反報告)
ぱ た(プロフ) - 続き気になります ‥ ! (2021年2月23日 23時) (レス) id: 99d7cdb867 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆう | 作成日時:2021年1月15日 17時