Half step【3】 (ページ43)

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目を閉じる時間もなく、押し付けられた唇

キスの間考えていたのは、

彼とこんなに近くで繋がっているのに、
近すぎるせいで目は合わないし、塞がっているから会話もできない。

彼の考えていることが、わからない、少しの怖さ

いつもより少し長かったキスが終わって、頬にあった指が首筋をなぞるように降りていったかと思えば、手のひら全体で首の後ろを回った。

「えっ、」

言葉を飲み込むように、もう一度重なった唇は、簡単に離れることはなく

角度と動きを変えて、仕掛けられる。

上と下の唇の間に差し入れられた良規の舌は、ざらりとした感触を私に覚えさせた。

下唇を彼の唇で挟まれた時、その柔らかさをこれまで以上に感じて、戸惑う。

こじ開けられた咥内

どうしたらいいか分からない私の舌を迎えに来た彼のそれ

嫌ではなかった。

けれど、もっとしたい、よりも、恐怖心の方が勝る。

こんなの、ドラマの中でしか見たことがない。

後頭部に回った彼の手のひら

指が髪の毛の上を滑る感覚にも、ドキリとする。

瞬間、大吾のそれを思い出す。

あの深夜の街で繰り広げられていた

男の顔した大吾の姿を

「んっ、ぃやぁ、…」

彼の腕を組んで押し返すように離れると、じっとこちらを見下ろす彼の目とぶつかる。

いつもとも、怒っていたさっきまでとも違う。

硬い表情の奥にある、私の知らない彼がいる気がする。

「待って、…良規？なに…」

「…俺……
もう結構待ったで、」

「…なに、が？」

肌の露出している所を、少しずつ這っていく舌に、自分の意思とは関係なく、しなる身体。

それを片手で抑えて、もう片方の手が、まだ触れてない肌を探して性急に服を剥がそうとする。

「よし、のり？」

どういうことか聞こうとした問いかけに、彼からの返答はなく

代わりに与えられるのは、ゆっくりと唇を舐められる深い口づけ。

その最中に身につけていたものは、胸の膨らみの上まで捲られていて、外気に触れた上半身

壁にもたれていた背中がズルズルと滑る。

彼も向かい合ったまま、膝を折り曲げて、

「良規…？ねぇ、」

床に付いた私の背中に、彼の手が這った。