Half step【3】 (ページ35)

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6月に入った。

3週目の日曜が父の日やから、実家に帰ると言うと正門くんはついてくると言った。

「いいよ、忙しいのに。」

「その言い訳下手すぎ。
俺が忙しそうに見える？」

確かに、バンドの活動はまだ再開していない。
小島くんや大晴くんがどうしてるのか気になるけど、彼の機嫌が悪くなった時から、聞いていいものか分からず聞けないでいた。

会社に行くと、佐倉ちゃんが難しそうな顔をして来た。

「Aさん、お昼時間ありませんか？」

珍しい

いつも明るくてニコニコしてる佐倉ちゃんなのに。

お昼休み、会社から少し離れた店に向かう。

「…大丈夫？具合悪い？」

「そうじゃないんですけど、そう見えます？」

うん、とってもそう見える。

「…Aさん、最近ライブハウス行きました？」

「あぁ、佐倉ちゃん知らないのか？
今、Lazyboys活動お休みしてんの。」

「それほんとだったんだ。
でも、正門さんたまに見かけますよ？」

「……えぇ？？」

なにそれ初耳。

「見かけるのは正門さんくらいかなぁ。
あとのメンバーはさっぱり。」

それは、彼が1人だけで行ってるってこと？

「大丈夫ですか？」

「あぁ、うん…ごめんね？」

この流れでいうのは不本意ではあるけれど、佐倉ちゃんには言っとこうと思って、姿勢を正す。

「あのね。
佐倉ちゃんにちゃんと言えてなかったんやけど、
正門くんさぁ、」

「あ、付き合ってるんですよね。おめでとうございます。」

「なんで！？知ってんの！？！」

「結構みんな知ってますけどね～、知らない人の方が少ないんじゃないんですか？」

正門さん、隠さないタイプみたいですし、
先輩もうマッチングアプリやってないし。

そう言われて、事実春ごろ退会していたのでその通りすぎて返す言葉がない。

佐倉ちゃんが聞いてきたのは多分誠也さんとか？

てか佐倉ちゃん、誠也さんとなんかありそうな感じだったけど……

「実は、私も婚活でいい人と会って、」

「え、そうなの？
よかったね！早く結婚したいって言ってたもんね」

なのに、佐倉ちゃんの顔は途端に暗くなる。

「…先輩……」

「…なんかあった？」

私はそんな一言をかけるのが精一杯

「でも私、忘れられなくて…
その人は絶対結婚なんかしてくれないんですよ、なのに」

佐倉ちゃんは、ゆっくり言葉を繋いだ。

「なんで、こんなにも好きなんですか？」