Half step【3】 (ページ13)

今日:24 hit、昨日:30 hit、合計:133,388 hit

109 ページ13

財布をだけ持って、玄関に向かって行った彼を急いで追いかけると、ぐるっと振り向いて

「鍵忘れてた、」

「はい。じゃあ行こっか？」

リビングのテーブルの上に置かれていたキーケースを手渡すと、ようやく合った目線。

いつも彼には、何事にも優位に立たれてる気がしたから、
こうやって、私が面倒を見てあげる、というのは、レアだ。

「もー、なんなん…」

そう言って、先に行ってしまった彼に追いつくと、ぷいと逸らされる顔。
なんか怒ってる？呆れてる…？

「さっきから、無意識に俺の事唆して…」

「…私が？」

「他に誰がおるんよ、」

そう吐き捨てた彼は先にエレベーターを降りて行ってしまう。

「とにかく、今日はもう寝よ、
これ以上、なんもせんといて下さいよ？」

男の人の気持ちは、わからない。
悶々としてる彼の気に触らないように、そっと買い物を済まそうとしたけれど、レジに向かう途中で、ぐいとカゴを目の前に出される。

「こんだけでええの？」

「え、ありがとう」

半ば強引に取り上げられてしまって、レジを終えた彼にもう一度お礼を言うと、やっと少し優しい顔をしてくれた。

自分のことより、私の心配を1番にしてくれる。
怒ってるのかもしれないけど、なんだかんだ優しい。

正門くんのこと、知れば知るほど、好きなところが増える。

「正門くん、」

「なに？」

「まだ怒ってる？」

隣の彼を伺うように言うと、ピクっと表情が動いて

「…そう見えた？ごめん、」

なんて申し訳なさそうな顔をする。

ほら。そうやって、すぐに謝ってくれるところ

「いいよ。
正門くんのそういうとこ、好きだから。」

「…だから、さぁ〜！」

「え、…今の？」

「あかんって、言ったやん…」

今度こそ、ほんとに怒ったらしい彼は、あー！もー知らんなんて言いながら家に入ると、一目散にキッチンに向かう。

冷蔵庫の開く音と、ガチャガチャって音
それにプシュッ、とプルタブが開く音がした。

遅れて廊下を進んで行くと、流しに手を付き、缶片手に険しい表情の彼がいて、

「お風呂は、…」

「先入っておいで。」

これ以上はさすがにやばい。
私でもそれには気づいたから、黙ってお風呂場に向かうことしか出来なかった。