毒林檎と醒めないキス -永瀬廉-

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髪が風に揺れるたびに、爽やかな香りが鼻をかすめる



いつものシャンプーとはまた違う香り。これはきっと、さっき永瀬くんに抱きしめられた時についたもの。






ただの大学の友達程度の存在だったはずなのに、いつの間にか心の中で大きくなっていて




香りで感じる存在に縛られるようで、幸せで、苦しい




慣れない街のアスファルトをいつもより高いヒールで叩きつけるように歩くと、目の前に聳え立つオフィスビルの圧に息を飲んだ





「何、ここ……」





ガラス張り、ざっと50階はありそうなオフィスビル。回転扉を抜けると、スーツに髪をワックスで固めた男の人。




知らない世界の連続で、息が詰まりそうだった








「北原さん！」



遠くから監督が手をひらひら振りながらやって来る。話したことも1回しかないのに、このビルの中で安心するには十分な材料だった



「監督、お疲れ様です」


「お疲れ様！急に呼び出すことばっかりでごめんね！

今日は相手役の人にも来てもらってるから、アイスブレイク的な？本読み入ったり撮影入る前に挨拶しちゃった方が気が楽だと思うから」


「機会を設けてくださったんですね…ありがとうございます」





何階だかも分からない、道の車がミニカーに見れるほどの高さに着いて



白いドアを開けると






「はじめまして、北原さん」


「……あ、はじめまして！」



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