第34話 願わくば ページ35
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「銀ちゃん珍しくずっと難しい顔してるアル」
神楽ちゃんはこそこそ話をするように数メートルはなれた銀さんを指さす。それはAさんが心配だという感情だけでなく、別の何かを考えてるように思える。
しかし、集中しすぎて人にぶつかるわ電柱に体当たりするわ周りが見えてない。この人は……
「銀さん、血だらけです」
「え、うおォォォ?! 世界が真っ赤に! 」
「銀ちゃん、新八! そんなことしてる場合じゃないネ! 」
一応上司が血だらけなのに、そんなことで片付けられてしまう銀さんを半ば不憫に思いながらもハンカチを押し付け、神楽ちゃんの元へ向かう。上を見上げる神楽ちゃんの指さす方向には探し求めていたあの猫が。
「あー! 」
声をあげたのは僕だったが、いち早く反応したのは銀さん。それほど高くもない家の屋根に、塀を使いながら飛び乗る。神楽ちゃんも夜兎特有の身体能力で銀さんを追いかける。人間技じゃない。あ、元からあの人たち人間離れしてたわ。
「待って下さいっ」
2人を目で追いながら、僕は地上を走る。急に2人が視界から消えたが、銀さんが僕に向かって叫んだ。
「新八ィ! 裏の通りだ! 」
「は、はいっ」
返事をしたが息が切れてうまく声が出ない。本人には届いてないだろうが、指示通り裏道に向かって急ぐ。角を曲がったその時だ。
「うわっ! 」
「にャァ! 」
目の前にはプラプラ体を揺らして、神楽ちゃんに抱えられる猫の姿。急に飛び込んできた僕に猫は、不満げに喉を鳴らす。遅いアルと神楽ちゃんに怒られたがとにかく見つかって安堵した。銀さんといえば先ほどまでなかった傷が顔にあり、痛ェと小さく呟いていた。
意味ありげに神楽ちゃんと目が合う。
「銀さん行ってください。猫は僕たちが依頼主に返してきますから」
「ちょうど、もうすぐ仕事終わる時間アル」
「お前ら……」
僕の言葉に銀さんは目を丸くして、意味を理解しようとしている。答えを聞く前に僕は神楽ちゃんと歩き出し、それと同時に銀さんの足音が遠ざかった。
「なんとか間に合ったアルな」
「うん。神楽ちゃん今日はうちでご飯食べていきなよ。姉上も喜ぶ」
「卵かけご飯食べたいネ」
2人が上手くいけばいいけど、そんなこと誰にも分からない。たとえ2人の気持ちが交わらなくても、Aさんは僕らの大切な人だ。それは変わらない。
銀さんが去っていった方を振り向き、胸の中で小さく応援した。
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月夜の光(プロフ) - ありちゃんさん» コメントありがとうございます!!そう言ってもらえてすごく嬉しいです(;o;)もっと上手に表現できるように頑張ります!ありがとうございます! (2021年2月28日 15時) (レス) id: e8dd5af318 (このIDを非表示/違反報告)
ありちゃん(プロフ) - 月夜の光さんの神威が好きすぎて他の作品見れなくなりそうです!!キュンキュンします(^^)更新楽しみにしてます (2021年2月27日 20時) (レス) id: 15fe9d02c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月夜の光 | 作成日時:2021年1月2日 22時