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「母さんはね、学秀」
「父さんと違うことを言ってしまうけれど、貴方はただ良い子に育ってくれればそれで良いと思ってるの」
「勉強で100点が取れなくても、運動会で1位が取れなくても、ただ貴方が元気で笑っていてくれれば、母さんは幸せよ」
息子にいつも言い聞かせていた言葉だった。
バツの付いたテストを握りしめて涙を流す幼い息子を、包み込むように抱きしめた。
小さな手が、背中に回される。
「とうさんに叱られる」
黒いランドセルは床に投げ出され、教材が床に散乱していた。
「叱らないわよ。もし叱ったら、母さんが父さんを怒るわ。学秀はこんなに頑張ったのに」
「そうだ、さっきホットケーキを作ったのよ。まだ温かいうちに食べちゃいなさい」
腕の力を緩めると、目元と鼻を赤くした息子がようやくいつもの笑顔を見せた。
「かあさん」
「ありがとう」
ーーー
「“勝つこと”を生き甲斐にする人生は、あまりに大きなリスクを伴う選択です」
殺せんせーは言った。
人生において、努力ではどうにもならず乗り越えられない壁にぶつかる事態はいくらでも起こりうる。
勝つことのみを支えに磨いてきた刃は、そういった場面では脆く折れやすい。
最悪の場合、本人の精神を殺してしまう。
「そこで大事なのが、第二の刃です」
そして、ゴムのような素材でできたナイフを私に手渡した。
「第二の刃？」
「えぇ。何か大きな物と戦う時、一本だけの刃ではそれが折れたら打つ手をなくしてしまう」
「奥の手として第二の刃を持つことで、自信に溢れた最も良い状態で第一の刃を振るうことが出来るのです」
おもちゃのようなナイフは、指で押せば曲がってしまう程に柔らかかったが、弾力性があった。
「そしてね、浅野君のお母さん」
「浅野君に第一の刃を授けたのが理事長先生、第二の刃を授けたのが、貴女です」
「あくまで私の推測ですがね」と殺せんせーは空になった2つのティーカップにジュースを注いだ。
「どういう事でしょうか」
「理事長先生を非難するわけではありませんが、今の彼の教育は些か洗脳めいた所がある」
「ここ数年勝ちに対する執着やE組に対する憎悪を増幅させることで生徒達を急激に成長させてきました」
知っていた。
変わってしまった彼の教育方針の異常さは、私から見ても明らかだった。
「もし浅野君がずっと父親の影響のみ受け続けていたのなら、彼はどこかで困難に直面し、壊れてしまっていた可能性が高い」
「それを防いだのは貴女だったのでしょう」
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ミルメーク(プロフ) - 長い間お疲れ様でした！もし良ければ浅野親子関係で新しいストーリー作って欲しいです！ (3月21日 20時) (
レス) id: b3b06100e3 (このIDを非表示/違反報告)
hal - 非常に面白かったです！時間を忘れて一気に読みました。原作のイメージそのもので驚き、公式から浅野家スピンオフとして出せる作品だと感じました。私も学秀君が正気を保っていられたのも、浅野家が家族として何とか機能していたのも奥さんの存在が大きいと思っています (2023年3月13日 1時) (レス) id: 96f1185981 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメルコーン(プロフ) - 奥様が泣いたてしまったシーンが私の中で凄く感動して泣きました、これからも更新する予定でしたら更新していただけると嬉しいです！ (2022年9月2日 0時) (レス) id: bee3de3e8f (このIDを非表示/違反報告)
おむれつ(プロフ) - おもちゃ箱さん» コメントありがとうございます。キャラの口調等は特に気をつけて書いているのでそう言って頂けると嬉しいです！ありがとうございます。更新これからも頑張っていきます。よろしくお願いします。 (2022年2月24日 21時) (レス) id: b911301b3c (このIDを非表示/違反報告)
おもちゃ箱(プロフ) - キャラの特徴がすごくつかめていて、読んでいて違和感がないです！！お話も本当に面白いです！更新待ってます！ (2022年2月23日 21時) (レス) @page17 id: c78fba56e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おむれつ | 作者ホームページ：http://mokyumokyuuu
作成日時：2022年1月11日 19時
