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時刻は21時を回った。
ワインボトルは空になり、お皿に残ったナッツ類のお菓子をつまみに他愛ない話に花を咲かせる。
仕事で疲れているだろうに、晩酌に付き合ってくれる夫に内心密かに感謝した。
「何かあったのかい？」
夫が尋ねた。
「何かって？」
ワイングラスを傾け、残っていた分を飲み込んだ。
お酒には強い方なのだが、ペースが早かったせいかほんのりと酔いが回り、身体が火照る。
「いや、君にしては随分と飲み振りが良いものだから、何か嫌な事でもあったのかと思ってね」
夫は半笑いでそう言った。
夫は人のことをよく見ている。
人の視線の動きや、指の1本1本の動作でさえ相手の感情を読み取るには十分な資料となる。
きっと無意識のうちにそれが現れていて、心配してくれているのだろう。
「…そうね、嫌な事はないわ」
「嫌な事は？」
ふと視線を動かすと、木製のガイアチェストが目に入った。思わず口元が緩んでしまう。
そこには、折り紙でできた色とりどりのカーネーションが飾られており、今もなお輝きを放っている。
息子が…学秀が、母の日に作ってくれたものだ。
黄色い帽子を被って、新品の黒いランドセルを揺らして、一生懸命に走ってきてくれた
図書室で調べて、一人で作ったのだと誇らしげに持ってきてくれたものだった。
「…學峯さん」
「学秀はどんな大人になるのかしらね」
夫は一瞬顔を顰めたが、またすぐにいつもの平然とした表情を取り戻した。
「君はいつもその話をするね」
「だって楽しみなんだもの。どんな大学に入って、どんな仕事に就くのか。そして結婚して、子供が出来て…」
「そしたら私達おじいちゃんとおばあちゃんになっちゃうのよ。信じられる？」
「気が早い」と呆れられながらも、息子が生まれてから私は何度も夫にこの話をしていた。
まだ見ぬ息子の将来が、唯一の心の支えだった。
「でも、世の中にはたくさんの選択肢があるわ。良い大学やお金の貰える仕事じゃなくても、幸せになれる。結婚も子供も同じ…」
昔から変わらない。時間に余裕がある時はワインを開けて晩酌をする。
その度に私達の、息子が生まれてからは息子の将来の話をして。
ただ一つ変わったことは
「何故そう言いきれる」
「全てを支配できるようにならなければ」
「強くなければなんの意味も、価値もない」
『本当に楽しみだ』
『自分の行きたい道に進んで、なりたいものになればいい。ただ、良い子に育ってくれれば十分だ』
昔の貴方は、もういないのね。
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ミルメーク(プロフ) - 長い間お疲れ様でした！もし良ければ浅野親子関係で新しいストーリー作って欲しいです！ (3月21日 20時) (
レス) id: b3b06100e3 (このIDを非表示/違反報告)
hal - 非常に面白かったです！時間を忘れて一気に読みました。原作のイメージそのもので驚き、公式から浅野家スピンオフとして出せる作品だと感じました。私も学秀君が正気を保っていられたのも、浅野家が家族として何とか機能していたのも奥さんの存在が大きいと思っています (2023年3月13日 1時) (レス) id: 96f1185981 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメルコーン(プロフ) - 奥様が泣いたてしまったシーンが私の中で凄く感動して泣きました、これからも更新する予定でしたら更新していただけると嬉しいです！ (2022年9月2日 0時) (レス) id: bee3de3e8f (このIDを非表示/違反報告)
おむれつ(プロフ) - おもちゃ箱さん» コメントありがとうございます。キャラの口調等は特に気をつけて書いているのでそう言って頂けると嬉しいです！ありがとうございます。更新これからも頑張っていきます。よろしくお願いします。 (2022年2月24日 21時) (レス) id: b911301b3c (このIDを非表示/違反報告)
おもちゃ箱(プロフ) - キャラの特徴がすごくつかめていて、読んでいて違和感がないです！！お話も本当に面白いです！更新待ってます！ (2022年2月23日 21時) (レス) @page17 id: c78fba56e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おむれつ | 作者ホームページ：http://mokyumokyuuu
作成日時：2022年1月11日 19時
