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「今夜、暗殺が実行される」
帰宅と同時にそう告げると、彼女は大きく目を見開いた。
ぱちぱちと瞬きをし、しばらく固まった後、床に視線を落として消えそうなため息を零した。
「…死んでしまうのね。あの方」
語尾は掠れていた。
彼女の手が、弱々しく握られる。
「これは私の推測だが、彼を殺すのは彼の生徒達だよ」
「1年間彼と教室で過ごした生徒達だ」
彼女に細かい暗殺計画や、実際にこれまでE組で行われた殺せんせーの暗殺について細かくは話していない。
だから、彼女がメディアで報じられていた“暗殺の真似事”という単語をどう解釈したかはわからない。
「そう。なら、安心ね」
だが、彼女は本当に、心の底から安堵したように笑った。
これには私の方が驚いて、言葉が出て来なかった。
彼女は私の鞄を受け取り目を細めた。
玄関の照明のせいか、その瞳は潤んでいるように見えた。
「詳しい事はわからないけれど」
「貴方が人を殺せだなんて、教えるはずないわ」
今日の夕飯はシチューにしたと、彼女は笑顔で告げる。久々に家族全員で食べるのだから、こういう温かいものの方が良いでしょう。と
こちらに背を向け、リビングへ歩き出す彼女に声を掛けたかったが、情けのないことに上手く言葉を紡げない。
「Aさん」
「どうしたの。學峯さん」
名を呼ぶと、彼女は当然振り返る。
「學峯さん」
そして、鞄を抱えたままこちらへゆっくりと歩いてくる。
温かい色味をした彼女の髪を撫でた。
「君が、私の妻でよかった」
そしてそのまま手を彼女の頬に置き、そう告げた。
彼女は「何言ってるのよ、もう」と茶化すように私の肩を叩いた。
こんなやり取りをしたのはいつぶりか。こんな言葉を告げたのは、息子がまだほんの幼かった時以来だろう。
「早くお夕飯にしましょう。私達待っていたのよ」
「あぁ。ありがとう」
リビングへ続くドアの向こうからはシチューのまろやかないい香りがした。
家全体の温かい空気に、蓄積された疲労が溶けていくのがわかった。
「すまなかった。今回の一件で君にはまた苦労をかけてしまった」
「あははっ。いいのよ、そんなの。貴方の妻になる時点でわかりきっていた事だもの」
彼女は朗らかに笑った。
その横顔を見て、感服すると共に彼女に感謝した。
リビングへ入ると、何重にも重なった新聞を手にした息子と目が合った。
息子は一瞬目を逸らした後、少しの沈黙を置いて
「おかえりなさい。父さん」
と再び目を見てぶっきらぼうに呟いた。
なので私も
「ただいま」
と答えた。
終わり
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ミルメーク(プロフ) - 長い間お疲れ様でした！もし良ければ浅野親子関係で新しいストーリー作って欲しいです！ (3月21日 20時) (
レス) id: b3b06100e3 (このIDを非表示/違反報告)
hal - 非常に面白かったです！時間を忘れて一気に読みました。原作のイメージそのもので驚き、公式から浅野家スピンオフとして出せる作品だと感じました。私も学秀君が正気を保っていられたのも、浅野家が家族として何とか機能していたのも奥さんの存在が大きいと思っています (2023年3月13日 1時) (レス) id: 96f1185981 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメルコーン(プロフ) - 奥様が泣いたてしまったシーンが私の中で凄く感動して泣きました、これからも更新する予定でしたら更新していただけると嬉しいです！ (2022年9月2日 0時) (レス) id: bee3de3e8f (このIDを非表示/違反報告)
おむれつ(プロフ) - おもちゃ箱さん» コメントありがとうございます。キャラの口調等は特に気をつけて書いているのでそう言って頂けると嬉しいです！ありがとうございます。更新これからも頑張っていきます。よろしくお願いします。 (2022年2月24日 21時) (レス) id: b911301b3c (このIDを非表示/違反報告)
おもちゃ箱(プロフ) - キャラの特徴がすごくつかめていて、読んでいて違和感がないです！！お話も本当に面白いです！更新待ってます！ (2022年2月23日 21時) (レス) @page17 id: c78fba56e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おむれつ | 作者ホームページ：http://mokyumokyuuu
作成日時：2022年1月11日 19時
