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「浅野理事長の奥様！奥様は今回の件について____」
「ご主人に何か怪しい行動は____」
「奥様はこの件に何か関与を____」
玄関の扉を開けるなり、質問と大型のカメラのフラッシュが矢の如く飛ばされる。
「ここは私有地ですので、無断の撮影はお控えください」
爪の先まで整えられた細い指先が、ゆっくりと玄関の扉を閉める。
杏子のような淡い色をした真っ直ぐな髪を風になびかせ、白い肌にぽってりと赤い唇が笑みを帯びる。
理事長夫人の立ち振る舞いは実に優雅で、こんな状況にも関わらず、何処からか胡蝶蘭の香りでも漂ってきそうな、彼女の所作はそんな美しさを秘めていた。
「質問には後程ちゃんとお答え致しますから、皆様どうぞカメラを置いてください」
だが
だが、この違和感は何だろう。
未だにカメラを抱えた私を見て、夫人は微笑みかける。
「置いてください、ね」
その瞬間、まるで毒蛇に睨まれた雨蛙のように、私はカメラの電源を落としてしまった。
その瞳は夜の空が凝縮して閉じ込められたように美しく、あまりにも恐ろしい。
「皆様、少しだけお時間を頂けますか」
「なんて事はありません。ほんの3分程度ですから」
________
母の戻りは存外早かった。
「やっぱり何事も学んでおいて損は無いのねぇ」なんて軽口を叩きながら、母はなんて事ない表情で手を洗う。
家の外の騒ぎ声が消えて安堵に包まれると同時に、母の笑顔が妙に恐ろしく感じた。
「これを機に携帯を買い換えようかしら。今は前と比べて容量も大きくなったのよね」
「学秀、春休み時間がある日に一緒に携帯ショップへ来てくれないかしら？今の子はこういうの詳しいでしょう」
母は大人数のマスコミを相手にした後でもどこか嬉しそうに、そして楽しそうに微笑んでいた。
その表情は以前のような作り笑顔ではない。
「わかりました」と珈琲を飲みながら僕は答えた。
「ありがとう」と母は笑みを深くする。
状況に合わないほのぼのとした親子のやり取りを、僕は年相応に気恥ずかしく感じた。
「あ、そうそう。今日は父さんも夕食までに帰ってくるみたいよ。久しぶりに家族全員で食べましょう」
成程、それで母さんは機嫌が良いのか。
気がつくとランチョンマットの上にはオムライスの乗った皿が置かれている。
卵の柔らかく優しい香りがした。幼い頃から定期的に家に漂っている香り。
将来僕が独り立ちした時に、父のこだわっている珈琲の匂いとこの卵の匂いを思い出すのだろうか。
そんなくだらない事を考えながら、甘めのオムライスを口に運んだ。
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ミルメーク(プロフ) - 長い間お疲れ様でした！もし良ければ浅野親子関係で新しいストーリー作って欲しいです！ (3月21日 20時) (
レス) id: b3b06100e3 (このIDを非表示/違反報告)
hal - 非常に面白かったです！時間を忘れて一気に読みました。原作のイメージそのもので驚き、公式から浅野家スピンオフとして出せる作品だと感じました。私も学秀君が正気を保っていられたのも、浅野家が家族として何とか機能していたのも奥さんの存在が大きいと思っています (2023年3月13日 1時) (レス) id: 96f1185981 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメルコーン(プロフ) - 奥様が泣いたてしまったシーンが私の中で凄く感動して泣きました、これからも更新する予定でしたら更新していただけると嬉しいです！ (2022年9月2日 0時) (レス) id: bee3de3e8f (このIDを非表示/違反報告)
おむれつ(プロフ) - おもちゃ箱さん» コメントありがとうございます。キャラの口調等は特に気をつけて書いているのでそう言って頂けると嬉しいです！ありがとうございます。更新これからも頑張っていきます。よろしくお願いします。 (2022年2月24日 21時) (レス) id: b911301b3c (このIDを非表示/違反報告)
おもちゃ箱(プロフ) - キャラの特徴がすごくつかめていて、読んでいて違和感がないです！！お話も本当に面白いです！更新待ってます！ (2022年2月23日 21時) (レス) @page17 id: c78fba56e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おむれつ | 作者ホームページ：http://mokyumokyuuu
作成日時：2022年1月11日 19時
