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僕が起床した時には既に、家に父はいなかった。
その代わりに、60インチのテレビの中の父の写真と、ソファで珈琲を飲みながらその様子を観ている母の姿があった。
「母さん、これは一体...」
父は、月を破壊した国家機密の生物をE組の教師として雇っていた。そして、E組の生徒に暗殺の真似事をさせていた。
机の上の新聞から、そんな文字が飛び込んできた。
「あら学秀、おはよう。今日は学校お休みですって。家でゆっくりしていなさいね」
「いや、そんな事を言っている場合ですか」
母のあまりにいつも通りの様子に、度肝を抜かれると同時に正気を失っているのかと疑った。
だが、母の雰囲気は以前よりも柔らかく、しかし真っ直ぐに背筋を伸ばしてテレビを見つめるその横顔からは、強かな覚悟が感じられる。
「父さんが惑星1つ破壊しかけた宇宙人を教師として雇っていたんですよ。しかも、生徒に暗殺の真似事をさせていた」
母は、テレビから視線を移して「ふふふっ」と小さく肩をくすませて笑った。
「あのねぇ学秀、新聞記事やテレビの情報だけではわからない事実なんて、たくさんあるのよ」
薄らと珈琲の匂いが漂う。
母が父と同じ珈琲を飲んでいるのは珍しい。
「この先生が、朗らかで物腰が柔らかくて、ちょっぴり下衆な所もあって...そんな楽しい方かもしれない可能性だって否定できないわ」
「何を言っているんですか」
母のお気楽さに、思わず溜め息が零れた。
この人はおそらく、街に放射線を放つ怪獣が現れても、テキサス州程の大きさの隕石が落ちてきても、こんな風に朗らかに笑っているのだろう。
「あまり心配しないでね。この件は父さんと母さんで上手くやるから」
「心配ははなからしていませんよ」
怪物のような僕の両親は、きっと本当に何ともないようにあっさりと事を収めてしまう。
僕には何故だかその確信があった。
テレビに映る父を観ても不思議と気持ちが落ち着いているのはそのせいだろう。
「朝食は何がいい？今なら一通り作れるわよ」
「母さんに任せますよ」
「もう、父子揃って同じことしか言わないんだから」
母は困ったような笑みを浮かべてソファから立ち上がると、キッチンへと向かった。
それからしばらく間を置いて、インターホンの音が鳴る。
母はまるで聞こえていないかのように、慣れた手つきで食材を切っていく。
そこに追い打ちをかけるようにもう一度インターホンが鳴った。外からは何やら騒がしい声がする。
「...学秀、外へ出てきたら駄目よ」
母はため息混じりに小さく笑みを浮かべると、エプロンの紐を解いた。
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ミルメーク(プロフ) - 長い間お疲れ様でした！もし良ければ浅野親子関係で新しいストーリー作って欲しいです！ (3月21日 20時) (
レス) id: b3b06100e3 (このIDを非表示/違反報告)
hal - 非常に面白かったです！時間を忘れて一気に読みました。原作のイメージそのもので驚き、公式から浅野家スピンオフとして出せる作品だと感じました。私も学秀君が正気を保っていられたのも、浅野家が家族として何とか機能していたのも奥さんの存在が大きいと思っています (2023年3月13日 1時) (レス) id: 96f1185981 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメルコーン(プロフ) - 奥様が泣いたてしまったシーンが私の中で凄く感動して泣きました、これからも更新する予定でしたら更新していただけると嬉しいです！ (2022年9月2日 0時) (レス) id: bee3de3e8f (このIDを非表示/違反報告)
おむれつ(プロフ) - おもちゃ箱さん» コメントありがとうございます。キャラの口調等は特に気をつけて書いているのでそう言って頂けると嬉しいです！ありがとうございます。更新これからも頑張っていきます。よろしくお願いします。 (2022年2月24日 21時) (レス) id: b911301b3c (このIDを非表示/違反報告)
おもちゃ箱(プロフ) - キャラの特徴がすごくつかめていて、読んでいて違和感がないです！！お話も本当に面白いです！更新待ってます！ (2022年2月23日 21時) (レス) @page17 id: c78fba56e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おむれつ | 作者ホームページ：http://mokyumokyuuu
作成日時：2022年1月11日 19時
