ー番外編ー ページ39
「遺伝というのは本当に面白いな」
彼は昼寝から目覚めた息子を抱き上げながら、愛おしそうにゆっくりと目を細めた。
「目元や鼻の形は私によく似ているが、髪や目の色素は君と同じだ」
私は、陽だまりの下で洗濯物を畳みながら、その温かい光景を眺めていた。
「ねぇ、學峯さん」
「何だい。Aさん」
「貴方、私の両親をどうやって説得してくれたの？」
息子をあやす手を止め、彼はこちらへ顔を向けた。
「結婚の挨拶へ行った時の事かな」
「えぇそうよ。あの時とても驚いたの。私ですら両親の意見を変えられた事なんてめったになかったのよ」
「しかもたった3分だなんて。一体何を話したの？」
彼は軽く笑みを浮かべると、再び窓の外に目を向ける。
息子は潤んだ目をぼんやりと開き、言葉にならない声を発しながら、小さな手のひらを彼の指先に向かって伸ばした。
「言い方は悪いが、少し言い包めさせてもらっただけだよ。よかったら君にも教えようか。人の意見を変えさせるなんて、簡単な事だよ」
「うふふ。嫌だわ、怖い事を言わないで」
彼が片手で息子をくすぐると、息子は甲高い笑い声を上げて手足をばたつかせる。
その様子を見る彼の緩みきった表情は俗に言う“親バカ”なのだろう。
ーーー
ワイングラスの触れる音が、リビングに響く。
息子は既に高校進学に向けた準備をしているのか、リビングに下りてくる気配はなかった。
「やっぱり學峯さんの選ぶワインは美味しいわね。とても軽くて飲みやすいわ」
「この間の休みにソムリエの資格を取ったからね」
「まぁ、知らなかったわ、おめでとう。私もまだ取っていない資格を探してみようかしら」
ワインからは、ほのかにハーブの匂いが漂う。
キャンドルの火が、少し激しく揺れていた。
「ねぇ、學峯さん。私の実家へ結婚の挨拶に来てくれた時の事、覚えているかしら」
「あぁ。覚えているよ」
「あの時、どうやって3分で私の両親を言い包めたの？」
學峯さんの灰色がかった瞳が、こちらを映した。
彼は少し楽しんでいるのだろう。
「なに、そんなに難しい事ではないよ。まず、相手の目をよく見て________」
彼はワインを飲みながら、時折チーズをつまみながら、人を“言い包める”方法。つまりは、洗脳する方法を語った。
彼は何も私の両親の精神を破壊した。だとか、そんな大それた事はしていない。
ただ、あの日から両親は一度も私達の関係に口を出さない。今では孫を溺愛する優しい祖父母となったのだ。
私はゆるりと微笑んで、活き活きと話す彼を見つめた。
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ミルメーク(プロフ) - 長い間お疲れ様でした！もし良ければ浅野親子関係で新しいストーリー作って欲しいです！ (3月21日 20時) (
レス) id: b3b06100e3 (このIDを非表示/違反報告)
hal - 非常に面白かったです！時間を忘れて一気に読みました。原作のイメージそのもので驚き、公式から浅野家スピンオフとして出せる作品だと感じました。私も学秀君が正気を保っていられたのも、浅野家が家族として何とか機能していたのも奥さんの存在が大きいと思っています (2023年3月13日 1時) (レス) id: 96f1185981 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメルコーン(プロフ) - 奥様が泣いたてしまったシーンが私の中で凄く感動して泣きました、これからも更新する予定でしたら更新していただけると嬉しいです！ (2022年9月2日 0時) (レス) id: bee3de3e8f (このIDを非表示/違反報告)
おむれつ(プロフ) - おもちゃ箱さん» コメントありがとうございます。キャラの口調等は特に気をつけて書いているのでそう言って頂けると嬉しいです！ありがとうございます。更新これからも頑張っていきます。よろしくお願いします。 (2022年2月24日 21時) (レス) id: b911301b3c (このIDを非表示/違反報告)
おもちゃ箱(プロフ) - キャラの特徴がすごくつかめていて、読んでいて違和感がないです！！お話も本当に面白いです！更新待ってます！ (2022年2月23日 21時) (レス) @page17 id: c78fba56e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おむれつ | 作者ホームページ：http://mokyumokyuuu
作成日時：2022年1月11日 19時
