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母は庭でシーツを干していた。
ベランダの物干し竿は三人分の洗濯物で埋め尽くされていたためだった。
換気のためにほんの数センチ開けられた窓から、機嫌の良い鼻歌が聞こえてくる。
母はあの日以来、随分と明るくなった。
「父さん」
一方の父は、僕の声にも視線を上げず、英字新聞を読みながら、珈琲カップを手に取った。
休日はいつも部屋にこもって勉強ばかりしている父がリビングにいるのは珍しいことだった。
「庭に不審者がいます」
父はようやく僕の声に反応を示した。
ほんの一瞬目線を外した隙に、母の隣には関節の曖昧な、なんと言えばいいか。こう、人間離れした体格の巨漢が立っていた。
うねうねとした動きはひどく不気味で、一種の妖怪のようにすら思えた。
警察か、取り押さえに行くかと思考を巡らせる僕に対し、父はなんて事のない様子で言った。
「あぁ、あの方は私と母さんの知り合いだ。気にする事はないよ」
「いや、何を呑気なことを…」
母はその巨漢を前にしても一切怯むことなく、むしろどこか嬉しそうに会話をしていた。
朗らかな笑い声が、窓の隙間から微かに聞こえてくる。
自分の妻があんなにもわかりやすい不審者に絡まれているというのに、何故この男はこんなにも優雅に珈琲なんて飲んでいるのか。
僕は動揺していたが、二人の様子を見ると何だかそれも馬鹿らしくなり、庭に細心の注意を払いつつ、文庫本のページをめくった。
ーーーーー
「あら、殺せんせー。随分とご無沙汰しております」
「いらっしゃるなら一つ連絡をくださればよかったのに。こんな格好で申し訳ありません」
シーツを干し終えた後、私は慌ててエプロンを外した。
人間に擬態しているつもりであろう殺せんせーは、謙遜しつつもどこか紳士的に頭を下げた。
「いえ、チャイを飲むためインドへ寄ってきた帰りに少し時間が出来たので立ち寄っただけです。どうかお気遣いなく」
「ふふっ、相変わらずとてもお速いんですね」
しばらく他愛ない話をしていると、殺せんせーは穏やかに目尻を下げた。
「お変わりはありませんか？」
「えぇ。夫婦共々お世話になってしまって、ありがとうございます。よかったら少しあがっていかれますか？」
「今は主人もいますし、先日頂いたチョコレートのお菓子もありますよ」
殺せんせーは人間の皮膚の色に変わった触手で頭をかくと、やはり変わらずほんのりとした笑顔を見せた。
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ミルメーク(プロフ) - 長い間お疲れ様でした！もし良ければ浅野親子関係で新しいストーリー作って欲しいです！ (3月21日 20時) (
レス) id: b3b06100e3 (このIDを非表示/違反報告)
hal - 非常に面白かったです！時間を忘れて一気に読みました。原作のイメージそのもので驚き、公式から浅野家スピンオフとして出せる作品だと感じました。私も学秀君が正気を保っていられたのも、浅野家が家族として何とか機能していたのも奥さんの存在が大きいと思っています (2023年3月13日 1時) (レス) id: 96f1185981 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメルコーン(プロフ) - 奥様が泣いたてしまったシーンが私の中で凄く感動して泣きました、これからも更新する予定でしたら更新していただけると嬉しいです！ (2022年9月2日 0時) (レス) id: bee3de3e8f (このIDを非表示/違反報告)
おむれつ(プロフ) - おもちゃ箱さん» コメントありがとうございます。キャラの口調等は特に気をつけて書いているのでそう言って頂けると嬉しいです！ありがとうございます。更新これからも頑張っていきます。よろしくお願いします。 (2022年2月24日 21時) (レス) id: b911301b3c (このIDを非表示/違反報告)
おもちゃ箱(プロフ) - キャラの特徴がすごくつかめていて、読んでいて違和感がないです！！お話も本当に面白いです！更新待ってます！ (2022年2月23日 21時) (レス) @page17 id: c78fba56e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おむれつ | 作者ホームページ：http://mokyumokyuuu
作成日時：2022年1月11日 19時
