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夕暮れが近づく
「お聞きになったかもしれませんが、先日少しばかり妻に叱られましてね」
「いえ、それは初耳ですねぇ」
「そうでしたか。てっきり妻が話したものかと」
空には薄い雲がかかり、気候はどんよりとしている。
今日は夜から雨が降るらしい。
「反省していますよ。私は何年もの間教育ばかりに捕らわれて、家庭を省みることはしなかった」
「妻は私の想像以上に多くの負担を抱えて、我慢をしてきたのだと思います」
彼女のあんな表情は、攻撃的な目は、初めて見た。
まるで敵を見るようだった。
いや、実際あの時の私は彼女にとってただの息子の仇に他ならなかったのかもしれない。
「ヌルフフフフ。誰もが恐れる理事長先生も、奥様には敵わないのですね」
「ははは、家の中は妻の管轄内ですから」
今、私の目の前で珍妙な笑い声をあげるE組の担任
この殺せんせーとの賭けに敗北した日だ。
帰宅途中の車内で一件のメールが届いた。
妻からだった。
体調を崩して夕飯を作れそうにない
熱も高くは無いが、息子と外で食べてきて欲しい
との事だった。
病態の確認も兼ねて帰宅すると、妻はベッドの隅で横になっていた。
額には汗が浮き出ており、呼吸は乱れている。
側へ寄ると、彼女の目が薄らと開いた。
「あら學峯さん、おかえりなさい」
彼女はゆったりと身体を起こした。
「君は寝ていなさい。身体に障るだろう」
「いいのよ。熱は大したことないし」
「こうしていた方が楽だもの」
昨晩の事など何も無かったかのように、彼女は穏やかに笑った。
「可笑しいわね、いつも貴方達の心配ばかりして自分が真っ先に体調を崩すなんて」
「いいや、私が君に負担を掛けすぎたんだ」
温かいお茶の入ったカップを手渡すと、彼女はそれを両手で包み込み、ゆっくりと飲んでいく。
「すまなかったね」
「Aさん」
彼女の瞳が大きく開いた。
カップをベッド横の棚へ置き、身を乗り出す。
「どうしたの？」
その声は震えていた。
「E組の先生に“手入れ”をされてしまってね」
「何か、変だったかな」
微笑みながら答えると、彼女は口元を抑える。
「変よ。だって今の貴方、昨日と…ううん。ここ十年の貴方と全然雰囲気が違うんだもの」
「まるで昔の學峯さんに…」
言葉はそこで途切れた。
彼女の頬を濡らしていく大量の涙をせき止めるように
私は彼女を抱き締めた。
その時、私はようやく思い出した。
もう何年も、彼女の名を呼んでいなかった事を
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ミルメーク(プロフ) - 長い間お疲れ様でした！もし良ければ浅野親子関係で新しいストーリー作って欲しいです！ (3月21日 20時) (
レス) id: b3b06100e3 (このIDを非表示/違反報告)
hal - 非常に面白かったです！時間を忘れて一気に読みました。原作のイメージそのもので驚き、公式から浅野家スピンオフとして出せる作品だと感じました。私も学秀君が正気を保っていられたのも、浅野家が家族として何とか機能していたのも奥さんの存在が大きいと思っています (2023年3月13日 1時) (レス) id: 96f1185981 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメルコーン(プロフ) - 奥様が泣いたてしまったシーンが私の中で凄く感動して泣きました、これからも更新する予定でしたら更新していただけると嬉しいです！ (2022年9月2日 0時) (レス) id: bee3de3e8f (このIDを非表示/違反報告)
おむれつ(プロフ) - おもちゃ箱さん» コメントありがとうございます。キャラの口調等は特に気をつけて書いているのでそう言って頂けると嬉しいです！ありがとうございます。更新これからも頑張っていきます。よろしくお願いします。 (2022年2月24日 21時) (レス) id: b911301b3c (このIDを非表示/違反報告)
おもちゃ箱(プロフ) - キャラの特徴がすごくつかめていて、読んでいて違和感がないです！！お話も本当に面白いです！更新待ってます！ (2022年2月23日 21時) (レス) @page17 id: c78fba56e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おむれつ | 作者ホームページ：http://mokyumokyuuu
作成日時：2022年1月11日 19時
