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私と並ぶ好成績を収めていた彼女の存在は、出会う前から何となく知っていた。
「貴方は…浅野君、だったかしら」
「えぇ。こんにちは」
彼女は朗らかな笑顔で挨拶を返し、会釈をした。
当時の私と彼女の感性は類似していたためか、親しくなるのにそう時間はかからなかった。
暇が出来れば二人でいろいろな場所へ出掛けた。
彼女は肩を弾ませ、時々白いスカートをふわりと揺らしながらこちらを振り返る。
彼女は、傍から見れば相当に恵まれているだろう。
成績も良く、運動も人並み以上、家の後ろ盾も有力であり、おまけに容姿端麗
にもかかわらず、まるで物足りていないようだった。
それは決して贅沢という訳でなく、彼女はもっと本質的なものを求めているのだ。
「私には、何も無いのよ」
彼女は足元に落ちていた葉を広い、太陽へかざした。
虫に食われた穴から光が漏れて、彼女の頬を照らす。
「確かに私は人よりたくさんの事が出来るのかもしれないけれど、全部目的なんてないの」
「うちは両親が厳しくて、幼い頃から“教養”としてありとあらゆる分野を学んできたわ」
初雪のような透き通った肌に、目を奪われた。
「でも、私は結局それに従ってきただけよ。やりたい事もなりたい物もない」
彼女は哀しみの混じった視線を落とす。
「ただ、それでもいろんなことを学び続けていたら、いつか何者かになれるんじゃないかと期待してた」
「いえ、今も期待し続けているわ」
細く長い指が離れると、その葉は風に乗って飛んで行ってしまった。
「浅野君は教師になりたいのよね」
「あぁ。雑音のない山奥で、ひっそりと私塾を経営しようかと思っているよ」
「素敵ね。貴方ならきっと良い先生になれるわ」
彼女は羨望するように目を細めた。
木漏れ日に包まれたその姿は、触れようものなら柔らかな綿となって空へと消えてしまいそうだった。
「君は何者にもなれていないわけじゃない」
「私にとって、君といる時間は価値あるものだと思っているし、君がいる場所はとても気が休まる」
「やりたい事がないのなら、私と共に来て欲しいくらいだよ」
大きな目が、更に大きく開いた。
風により木の葉が揺れる音や野鳥が騒ぐ声が、やたらと大きく響いた。
「…私塾を開くのは、まだ数年後の話だけどね」
空気感に耐えきれずに口を開くと
「あははっ…！えぇ、わかったわ。考えみる」
「ありがとう浅野君」
彼女は頬を紅潮させて、はにかむように笑った。
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ミルメーク(プロフ) - 長い間お疲れ様でした！もし良ければ浅野親子関係で新しいストーリー作って欲しいです！ (3月21日 20時) (
レス) id: b3b06100e3 (このIDを非表示/違反報告)
hal - 非常に面白かったです！時間を忘れて一気に読みました。原作のイメージそのもので驚き、公式から浅野家スピンオフとして出せる作品だと感じました。私も学秀君が正気を保っていられたのも、浅野家が家族として何とか機能していたのも奥さんの存在が大きいと思っています (2023年3月13日 1時) (レス) id: 96f1185981 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメルコーン(プロフ) - 奥様が泣いたてしまったシーンが私の中で凄く感動して泣きました、これからも更新する予定でしたら更新していただけると嬉しいです！ (2022年9月2日 0時) (レス) id: bee3de3e8f (このIDを非表示/違反報告)
おむれつ(プロフ) - おもちゃ箱さん» コメントありがとうございます。キャラの口調等は特に気をつけて書いているのでそう言って頂けると嬉しいです！ありがとうございます。更新これからも頑張っていきます。よろしくお願いします。 (2022年2月24日 21時) (レス) id: b911301b3c (このIDを非表示/違反報告)
おもちゃ箱(プロフ) - キャラの特徴がすごくつかめていて、読んでいて違和感がないです！！お話も本当に面白いです！更新待ってます！ (2022年2月23日 21時) (レス) @page17 id: c78fba56e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おむれつ | 作者ホームページ：http://mokyumokyuuu
作成日時：2022年1月11日 19時
