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母は一瞬だけ、自らが発した大声に驚いているようだった。
だが、再び険しい顔へと戻る。
それからは、一秒が数時間のように感じられた。
沈黙を破り、先に口を開いたのは父だった。
「……あの時は、気が動転していた」
「すまなかったね」
聴き逃してしまいそうな謝罪だったが、母の周りの空気がほんの少しだけ、和らいだように見えた。
父の目つきも相変わらずだが、先程よりはうんとマシだ。
「二階へ上がっていなさい。母さんと二人で話し合わなければならないようだ」
ジャケットを脱いでハンガーへかけると、父はそのまま椅子へと腰掛ける。
母がこちらを見ることはなかった。
子供にこれ以上親同士が揉めている姿を見せまいという、父なりの最低限の配慮なのだろう。
この場にいてもできることは無い
そう判断し、大人しく二階の自室へと向かう。
家は薄気味悪い静寂に包まれていた。
僕の足音以外、何一つ聞こえない。
______
「…ごめんなさい。取り乱して」
十分程経って、そう呟いた。
夫が息子に謝るかどうかは、正直のところ賭けだった。
もしあそこで謝らなければ、私はとうとう堪忍袋の緒が切れ、夫に平手うちの一つでもしていただろう。
「気持ちの整理はついたかな」
「えぇ。貴方に聞きたいことがあるの」
夫の声はまだ僅かに怒りを伴っている。
あんなに唐突な連絡をしてしまえば、無理もない。
割れるような頭痛や悪寒に襲われながらも、私は息子から聞いた話を一つ一つ述べ、真偽を確認していく。
「あぁ。全て本当の事だよ」
「そのどれもが、私の教育理念には矛盾していない」
さも当然のように答える夫に、再び頭に血が上っていくのを感じた。
「貴方は、もし学秀が同じ待遇を受けても…そうやって笑っていられるの？」
夫は微かに反応した。
夫は二学期期末テスト前後から何かが変わった。余裕がなくなったというべきか。
顔つきがいつもとは違う。
「貴方の仕事に口を出すのはお節介だとわかっているわ。貴方だって私の家事に口を出さないもの」
「でも、このままだと…貴方の愛する生徒が、いつか壊れてしまうわよ」
呼吸をする度に、肺がキリキリと痛む。
「明日、E組の担任ととある賭けを行うつもりでね」
「君が“今の”E組制度の撤廃を望んでいるのなら、そこで叶うかもしれないな」
夫は鞄から数冊の問題集を取り出し、ほくそ笑む。
そのおぞましい形相に背筋が凍った。
「學峯さん……どうしちゃったの」
返事は、なかった。
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ミルメーク(プロフ) - 長い間お疲れ様でした！もし良ければ浅野親子関係で新しいストーリー作って欲しいです！ (3月21日 20時) (
レス) id: b3b06100e3 (このIDを非表示/違反報告)
hal - 非常に面白かったです！時間を忘れて一気に読みました。原作のイメージそのもので驚き、公式から浅野家スピンオフとして出せる作品だと感じました。私も学秀君が正気を保っていられたのも、浅野家が家族として何とか機能していたのも奥さんの存在が大きいと思っています (2023年3月13日 1時) (レス) id: 96f1185981 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメルコーン(プロフ) - 奥様が泣いたてしまったシーンが私の中で凄く感動して泣きました、これからも更新する予定でしたら更新していただけると嬉しいです！ (2022年9月2日 0時) (レス) id: bee3de3e8f (このIDを非表示/違反報告)
おむれつ(プロフ) - おもちゃ箱さん» コメントありがとうございます。キャラの口調等は特に気をつけて書いているのでそう言って頂けると嬉しいです！ありがとうございます。更新これからも頑張っていきます。よろしくお願いします。 (2022年2月24日 21時) (レス) id: b911301b3c (このIDを非表示/違反報告)
おもちゃ箱(プロフ) - キャラの特徴がすごくつかめていて、読んでいて違和感がないです！！お話も本当に面白いです！更新待ってます！ (2022年2月23日 21時) (レス) @page17 id: c78fba56e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おむれつ | 作者ホームページ：http://mokyumokyuuu
作成日時：2022年1月11日 19時
