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古い記憶だ
母は陽の当たるベランダで布団を干していた。
僕はランドセルを背負ったまま、ぼんやりとその光景を見ていた。
母の髪は朝日の光を帯びながら、風に揺れている。
そして、華奢な体で大きな布団をようやく干し終えた後、
母は電池が切れたようにその場に座り込んだ。
声をかけようと手を伸ばすが、そのまま深くうずくまってしまう。
「母さん」
声を絞り出すと、母は弾かれたように振り返る。
その目は薄らと赤くなっていた。
だが、
「あら、まだ出ていなかったの？」
「学校遅れちゃうわよ」
また直ぐに、苦しげながらも笑顔を見せた。
それ以上は、恐ろしくて何も聞けなかった。
そこには触れてくれるなと、母の笑顔が語っていたからだ。
_______
こんなにも険しい顔をした母を、僕は生まれてこの方初めて見た。
「今夜は会食？えぇ存じています」
「お断りして、仕事が終わり次第直ちに帰宅するよう伝えてください」
母は返事も待たずに電話を切った。
もう母に笑顔はなかった。
だが、僕と目が合うなり、口角を上げて目を細めた。
あの時と同じ表情だ。
僕は母に、これまでの全てを話した。
外国人留学生への暴行、学校での父の教育の実態
E組制度についての詳細も尋ねられ、事細かに説明した。
母は黙って聞いていた。
話し終えた時、その顔は血の気が引いて青ざめていた。
だが、玄関ドアの開閉音と共に、再び一気に険しさを帯びる。
その目つきはあまりに鋭い。
「非常に勝手な内容の連絡を寄越したようだが、どういうつもりかな」
リビングに足を踏み入れた父の声音は、凍てつく氷のようだった。
姿を見ずとも、父の機嫌は最悪だとわかった。
「私の台詞よ」
「貴方、一体どういうつもりなの」
だが、母も負けてはいなかった。
僕と父とのものなど比にならない程重く、物狂おしい空気が辺りに充満する。
獣同士の闘いを見ているようだった。
両者が、隙を見せようものなら襲い掛かりそうな程の気迫で、眼光で、睨み合っていた。
「今まで学校で起こった事を全て聞いたわ」
「後で貴方と話し合いがしたい」
父は眉間に皺を寄せ、僕へ視線を動かす。
心の臓をえぐり取られてしまいそうだった。
「それと」
「今日のこと、学秀に謝って」
その声は震えている。
怯えでも、躊躇いでもない。純粋な怒りによる震え。
「謝りなさい！！！」
母は初めて大声を上げた。
温厚な怪物が、冷酷な怪物に牙を向いた。
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ミルメーク(プロフ) - 長い間お疲れ様でした！もし良ければ浅野親子関係で新しいストーリー作って欲しいです！ (3月21日 20時) (
レス) id: b3b06100e3 (このIDを非表示/違反報告)
hal - 非常に面白かったです！時間を忘れて一気に読みました。原作のイメージそのもので驚き、公式から浅野家スピンオフとして出せる作品だと感じました。私も学秀君が正気を保っていられたのも、浅野家が家族として何とか機能していたのも奥さんの存在が大きいと思っています (2023年3月13日 1時) (レス) id: 96f1185981 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメルコーン(プロフ) - 奥様が泣いたてしまったシーンが私の中で凄く感動して泣きました、これからも更新する予定でしたら更新していただけると嬉しいです！ (2022年9月2日 0時) (レス) id: bee3de3e8f (このIDを非表示/違反報告)
おむれつ(プロフ) - おもちゃ箱さん» コメントありがとうございます。キャラの口調等は特に気をつけて書いているのでそう言って頂けると嬉しいです！ありがとうございます。更新これからも頑張っていきます。よろしくお願いします。 (2022年2月24日 21時) (レス) id: b911301b3c (このIDを非表示/違反報告)
おもちゃ箱(プロフ) - キャラの特徴がすごくつかめていて、読んでいて違和感がないです！！お話も本当に面白いです！更新待ってます！ (2022年2月23日 21時) (レス) @page17 id: c78fba56e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おむれつ | 作者ホームページ：http://mokyumokyuuu
作成日時：2022年1月11日 19時
