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「わざわざ山の上まで御足労おかけしました」
「どうぞ、この山で取れたヤマブドウジュースです」
私はティーカップを受け取ると、そっと口をつけた。甘酸っぱい葡萄の香りが広がる。
「まだ生えていたんですね。ヤマブドウ」
「おや、ご存知で？」
「ええ。主人と息子を連れてこの山を散策した時に食べたんです。もう10年以上も前のことですけれど」
「ジャムやジュースにしても、果実酒にしても、とても美味しい」
目を瞑って、よく味わった。
そうだ。この味だ。なんて懐かしいんだろう。
「アケビやタマゴタケもまだ生えているんですか？」
窓の外で生い茂る森へと視線を向けた。
どこからか鳥のさえずりが聞こえてきそうな程、立派な森だった。枝の一本一本が懸命に空へと手を伸ばしている。
今の時期は、葉が赤く染まっていてとても綺麗。
「はい。学園祭の際には調理して提供しましたよ」
「それは良いですね。私もお邪魔すればよかった」
ガスストーブの上に置かれたやかんがしゅんしゅんと音を立てている。
もうじき秋も終わり、冬が舞い降りる。
「そういえば、まだ貴方のお名前をお伺いしていませんでしたね」
「にゅやッ、てっきり理事長先生からお伺いしていると思っていました。紹介が遅れて申し訳ありません」
「３年Ｅ組の担任を務めている者です。どうぞ、親しみを込めて“殺せんせー”と呼んでください」
ヌルフフフ、と殺せんせーと名乗るその生物は珍妙な笑い声を上げた。
「浅野學峯の家内の浅野Aと申します」
「何時も主人が大変お世話になっております」
互いに頭を下げると、不意に口元が緩んでしまう。
今更ながらタコのような未知の生物と普通に会話をしているこの状況が、可笑しく感じられたのだ。
「流石は理事長先生の奥様ですねぇ。私のこの姿を見ても驚かれないとは」
「ふふ。世の中は広いですから、何があっても不思議ではありません」
「ちゃんとあなたの存在は内密にさせて頂きますので、御安心くださいね」
私達は初対面にも関わらず、沢山の話をした。
“殺せんせー”はとても物腰が柔らかく、話の引出し口もとても豊富で面白い方だった。
だからこそ、そんな雰囲気に呑まれてしまったのかもしれない。
「殺せんせー、少しだけ、主人の話をしてもよろしいですか？」
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ミルメーク(プロフ) - 長い間お疲れ様でした！もし良ければ浅野親子関係で新しいストーリー作って欲しいです！ (3月21日 20時) (
レス) id: b3b06100e3 (このIDを非表示/違反報告)
hal - 非常に面白かったです！時間を忘れて一気に読みました。原作のイメージそのもので驚き、公式から浅野家スピンオフとして出せる作品だと感じました。私も学秀君が正気を保っていられたのも、浅野家が家族として何とか機能していたのも奥さんの存在が大きいと思っています (2023年3月13日 1時) (レス) id: 96f1185981 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメルコーン(プロフ) - 奥様が泣いたてしまったシーンが私の中で凄く感動して泣きました、これからも更新する予定でしたら更新していただけると嬉しいです！ (2022年9月2日 0時) (レス) id: bee3de3e8f (このIDを非表示/違反報告)
おむれつ(プロフ) - おもちゃ箱さん» コメントありがとうございます。キャラの口調等は特に気をつけて書いているのでそう言って頂けると嬉しいです！ありがとうございます。更新これからも頑張っていきます。よろしくお願いします。 (2022年2月24日 21時) (レス) id: b911301b3c (このIDを非表示/違反報告)
おもちゃ箱(プロフ) - キャラの特徴がすごくつかめていて、読んでいて違和感がないです！！お話も本当に面白いです！更新待ってます！ (2022年2月23日 21時) (レス) @page17 id: c78fba56e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おむれつ | 作者ホームページ：http://mokyumokyuuu
作成日時：2022年1月11日 19時
