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「やぁ、昼休みにすまないね。浅野君」
扉を開けると共に、父もとい理事長は薄っぺらい作り笑いを浮かべて、キャスター付きの椅子ごと振り返る。
「お気になさらず理事長。それより話とは」
そして、その背もたれに深くもたれながら、食い入るような目を向けた。
「学園祭の件だが、準備は進んでいるかな」
「えぇ。勿論です」
「今回こそは隙のない完璧な戦略で徹底的にE組を叩き潰してみせますよ」
氷のような笑みを浮かべたまま、理事長は再び「浅野君」と僕の名を呼び、手を組み替えた。
「自信というのは、油断と紙一重だ。例え相手がE組だとしても、徹底した作戦を練り力の限りを尽くす必要がある」
「事実君の戦略の抜け目により、E組との賭けや体育祭の棒倒しは敗北に終わった」
「それにより全校生徒のE組に対する目が蔑みから羨望へと変化しつつある」
窓硝子に亀裂が入ってしまいそうな程の、重苦しい雰囲気が辺りに充満する。
「これが私の教育理念に反する事は知っているね」
一学期期末テストによるE組とA組の賭け
体育祭の棒倒し
これらは僕なりに長期間かけて戦略を練り、クラス全員で話し合いを重ね、全力を尽くして挑んだものだ。
本来なら敗北は有り得なかった。
だが、落第クラスである３年Ｅ組は、ここ数ヶ月で飛躍的に成績を上昇させた。
まるで未知の何かの力を得ているように。
「学園祭が終われば直ぐに二学期の期末テストだ」
「A組とE組が共通のテストを行うのは、これが最後の機会」
「そこですべての決着をつける」
ナイフを首元に突きつけられているような
不気味な戦慄が、全身を駆け巡る。
「頑張りなさい」
応援ではない。脅迫だ
鈍く、重く、どろりとした黒いモヤが、心臓にまとわりついてくる。
「言われるまでもない事です」
理事長室を後にした途端、足取りは早くなる。
脳裏には血にまみれた理事長室と、機械のような、人間らしさなどまるでない父の笑顔があった。
『負けたというのになぜ君は…死ぬ寸前まで悔しがってないのかな？』
棒倒しに敗北した放課後、あの化け物は海外から助っ人に訪れた僕の友人に牙を向いた。
自身に盾を突き、僕を庇った
理由は、それだけ。
その日、救急搬送の指示を出しながら、自分の中に幼い頃から渦巻いていた疑念が確信へと変化した。
なぜもっと早くに気が付かなかったのか。
父の教育方針は誤っていること
そして
生徒として、息子として
僕はそれを覆すことを、密かに決意していた。
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ミルメーク(プロフ) - 長い間お疲れ様でした！もし良ければ浅野親子関係で新しいストーリー作って欲しいです！ (3月21日 20時) (
レス) id: b3b06100e3 (このIDを非表示/違反報告)
hal - 非常に面白かったです！時間を忘れて一気に読みました。原作のイメージそのもので驚き、公式から浅野家スピンオフとして出せる作品だと感じました。私も学秀君が正気を保っていられたのも、浅野家が家族として何とか機能していたのも奥さんの存在が大きいと思っています (2023年3月13日 1時) (レス) id: 96f1185981 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメルコーン(プロフ) - 奥様が泣いたてしまったシーンが私の中で凄く感動して泣きました、これからも更新する予定でしたら更新していただけると嬉しいです！ (2022年9月2日 0時) (レス) id: bee3de3e8f (このIDを非表示/違反報告)
おむれつ(プロフ) - おもちゃ箱さん» コメントありがとうございます。キャラの口調等は特に気をつけて書いているのでそう言って頂けると嬉しいです！ありがとうございます。更新これからも頑張っていきます。よろしくお願いします。 (2022年2月24日 21時) (レス) id: b911301b3c (このIDを非表示/違反報告)
おもちゃ箱(プロフ) - キャラの特徴がすごくつかめていて、読んでいて違和感がないです！！お話も本当に面白いです！更新待ってます！ (2022年2月23日 21時) (レス) @page17 id: c78fba56e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おむれつ | 作者ホームページ：http://mokyumokyuuu
作成日時：2022年1月11日 19時
