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「ねぇ父さん、先日家に来てくださったお客様からチーズを頂いたのよ。食べましょうよ」
「そうだね、頂こうかな」
父と母がリビングテーブルで会話していた。
「学秀もいらっしゃい。きっと美味しいわよ」
視線を動かすと、一瞬、父と目が合った。
「…いえ、僕はテスト勉強があるので結構です」
自室へ向かい、薄暗い勉強机の照明をつけてノートと教科書を開いた。
シャープペンシルを踊らせるようにして、次々と数式を解き明かしていく。
しばらくして、ドアを通して一階から微かに話し声が聞こえてくる。
内容までは聞き取れないが、楽しげな様子だ。
父と母の夫婦関係は決して悪くはない。
家でもよく話をしており、仕事面でも家事の面でも互いが互いの役割を理解し、それぞれ背中を任せているようだった。
また結婚記念日には二人で外出し、翌朝には決まっていつもリビングに大袈裟な花束が飾られていた。
今年の記念日も、母は何かと机の前を通る度にピンク色の胡蝶蘭を見ながらうっとりと顔をほころばせ、その日の食事はやけに豪華なものが出る。
資産も稼ぎもあるのだから指輪の一つでも買ってやればいいものを
父に対して幼い頃からそう思っていたが、この時母は心底喜んでいるようだった。
「学秀、入ってもいい？」
ノートを半分程消費した頃、部屋にノック音が響く。
「どうぞ」
ドアを開けると、母はいたずらっぽい笑顔で顔を覗かせる。
「…何ですか」
「頑張ってる息子に、お夜食を作ってきたの」
そして、母が部屋に入った途端、煙のようにチーズの温かい香りが舞い上がる。
その両手には出来たてのチーズリゾットの乗った木製ほトレーがあり、腹の虫が刺激されていくのを感じた。
「さっき父さんと食べたら、このチーズとてもまろやかで驚いたのよ」
「勉強もいいけど、温かいうちに食べなさいね」
トレーを机の端に置くと、母は僕のノートを見て、少し切なげに眉を落とす。
「貴方は本当に頑張ってる。とても偉いわ」
「でも、無理はしたら駄目よ。身体を壊したら元も子もないんだから、ちゃんと適度に休みなさいね」
「わかっていますよ。そんな事は基本中の基本だ」
母は少々過保護…というより、心配症だ。
もともと世話焼きな気質と親心が入り交じってか、定期的に僕が無理をしていないか気にかけているようだった。
少々うざったく感じる事はあったが、僕はトレーを近くに寄せると、チーズリゾットを口に運んだ。
出来たてのせいか、それはまだ少し熱かった。
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ミルメーク(プロフ) - 長い間お疲れ様でした！もし良ければ浅野親子関係で新しいストーリー作って欲しいです！ (3月21日 20時) (
レス) id: b3b06100e3 (このIDを非表示/違反報告)
hal - 非常に面白かったです！時間を忘れて一気に読みました。原作のイメージそのもので驚き、公式から浅野家スピンオフとして出せる作品だと感じました。私も学秀君が正気を保っていられたのも、浅野家が家族として何とか機能していたのも奥さんの存在が大きいと思っています (2023年3月13日 1時) (レス) id: 96f1185981 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメルコーン(プロフ) - 奥様が泣いたてしまったシーンが私の中で凄く感動して泣きました、これからも更新する予定でしたら更新していただけると嬉しいです！ (2022年9月2日 0時) (レス) id: bee3de3e8f (このIDを非表示/違反報告)
おむれつ(プロフ) - おもちゃ箱さん» コメントありがとうございます。キャラの口調等は特に気をつけて書いているのでそう言って頂けると嬉しいです！ありがとうございます。更新これからも頑張っていきます。よろしくお願いします。 (2022年2月24日 21時) (レス) id: b911301b3c (このIDを非表示/違反報告)
おもちゃ箱(プロフ) - キャラの特徴がすごくつかめていて、読んでいて違和感がないです！！お話も本当に面白いです！更新待ってます！ (2022年2月23日 21時) (レス) @page17 id: c78fba56e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おむれつ | 作者ホームページ：http://mokyumokyuuu
作成日時：2022年1月11日 19時
