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一体何時間が経過したのだろうか。
「とうさん」
階段を下ってきた息子が、拙い歩きで彼の元へと駆け寄る。
先程の私の大声で目を覚ましてしまったのだろう。
私も、彼も、顔を上げることができなかった。
笑わなければ
息子を安心させるために
何事も無かったかのように、笑わなければ
そう心で唱える度に、胸は締め付けられ、息は乱れ、涙は際限なく溢れ出る。
それでも、何とか指先で目元を拭って、私は精一杯の笑顔を息子に向けた。
「ごめんね学秀」
「今、父さんと母さんはとても大切なお話をしているの。だから、一人で寝られる？」
学秀は不安げな表情を浮かべたが、私達の様子を見て何かしら大変な事態が起こっている事を察してくれたようだった。
小さく頷くと、息子は紅葉のような小さな手で、彼の頭を撫でる。
彼は、それに釣られるように、再び顔を上げた。
「強い子に、育てなければ」
「社会の荒波にも打ち勝つことができるように」
「決して、理不尽に命を奪われることのないように」
他の誰でもない、自分自身に言い聞かせるように彼はそう呟いた。
灯りに照らされたその横顔は、もう彼の面影が亡くなってしまった事を示していた。
息子を見る目付きが、尋常ではなかったのだ
この人は誰だ。彼は何者かに乗っ取られたのか。
そう思いたくなる程、恐ろしい顔付きをしていた。
夫は包み込むように息子の頬を撫でると、口角を上げた。
「強者になるんだ。学秀」
「誰にも屈することの無い。父さんすら支配してしまうような、強者に」
この日から、夫と息子の関係は、さながら教師と生徒
へと変貌してしまった。
「學峯さん…」
夫の瞳は、もう何も映していない。
私の声は、届かない。
.
目を開けて隣を見ると、相当な時間が経過したはずなのに、夫は黙祷を捧げ続けていた。
そして、ゆっくりと目を開くと、私の方を見ていつものように微笑んだ。
「たまには、外食でもしようか」
「…えぇ、そうね。そうしましょうか」
立ち上がり、頭を下げると、私達はお墓通りを抜けて運転手の待つ車へと乗り込む。
夫はひたすらに黙って、フロントガラスの外の景色を眺めていた。
一体夫は今、何を思っているのだろうか。
「學峯さん」
彼の名前を、呼んでみた。
彼は振り返り、小さく顔を綻ばせた。
その瞳の中に、やはり私はいない。
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ミルメーク(プロフ) - 長い間お疲れ様でした！もし良ければ浅野親子関係で新しいストーリー作って欲しいです！ (3月21日 20時) (
レス) id: b3b06100e3 (このIDを非表示/違反報告)
hal - 非常に面白かったです！時間を忘れて一気に読みました。原作のイメージそのもので驚き、公式から浅野家スピンオフとして出せる作品だと感じました。私も学秀君が正気を保っていられたのも、浅野家が家族として何とか機能していたのも奥さんの存在が大きいと思っています (2023年3月13日 1時) (レス) id: 96f1185981 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメルコーン(プロフ) - 奥様が泣いたてしまったシーンが私の中で凄く感動して泣きました、これからも更新する予定でしたら更新していただけると嬉しいです！ (2022年9月2日 0時) (レス) id: bee3de3e8f (このIDを非表示/違反報告)
おむれつ(プロフ) - おもちゃ箱さん» コメントありがとうございます。キャラの口調等は特に気をつけて書いているのでそう言って頂けると嬉しいです！ありがとうございます。更新これからも頑張っていきます。よろしくお願いします。 (2022年2月24日 21時) (レス) id: b911301b3c (このIDを非表示/違反報告)
おもちゃ箱(プロフ) - キャラの特徴がすごくつかめていて、読んでいて違和感がないです！！お話も本当に面白いです！更新待ってます！ (2022年2月23日 21時) (レス) @page17 id: c78fba56e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おむれつ | 作者ホームページ：http://mokyumokyuuu
作成日時：2022年1月11日 19時
