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全ての食器を洗い終え、私は幼い息子の眠る寝室へと向かい、蹴られてベッドから落下した羽毛布団と毛布をかけ直した。
ベッドの淵へと座り、小さな頭を撫でると、息子は一瞬眉間に皺を寄せたが、再び寝息を立てる。
家事と育児との両立は決して楽ではなく、疲れが溜まっていない訳ではなかったが、無垢な寝顔を見た途端一気に気持ちが楽になるのを感じだ。
頬を緩ませながら見つめていると、玄関から扉の開閉音が聞こえる。
今日は池田君の家へ寄ってくる。夕食も食べてくると言っていたが、予想してたよりも早い帰宅であった。
「學峯さんよね？」
それきり、玄関からは物音一つしない。
足音も、リビングの扉の音も、人の気配すら感じさせない雰囲気に異様さを感じ、私は階段を降りて玄関へと急いだ。
「學峯さん」
彼は、扉の前で俯いていた。
よく表情は見えなかったが、彼の纏う雰囲気は明らかに“異常”そのもので、彼の身にただならぬ何かが起こったのは確実であった。
「どうしたの、何かあったの？」
「そんな所に立ってないで。お茶を用意するから、こっちで話を聞かせて」
その空気感を打ち壊すように出来るだけ明るく、笑顔で接したが、彼は答えない。
ただゆっくりと、黙ってこちらへ近づくと、ようやく顔を上げた。
安堵したのも束の間、私は背後から思い切り心臓を貫かれたかような衝撃を受けた。
「池田君が」
「自ら命を絶ったそうだ」
目の前が暗転する。
聞きたい事も言うべき台詞も山ほどあるというのに、一つたりとも言葉が出てこなかった。
ただひたすらに、胸の動悸を、乱れた息を整えるのに必死で、頭が上手く回らない。
「どうして…」
「中学の先輩による虐めが、原因だそうだ」
彼はその場へ崩れ落ちるように膝を着いた。
大きく角張った手が、小刻みに震えている。
私は片方の手をその上に添え、もう片方の手を彼の背中へと回した。
肺が酷く痛み、視界が激しく揺れる。
「私のせいだ」
「私が教え方を誤ったせいで、彼は死んだ」
「三年で死ぬ羽目になったんだ」
その表情は出かける前とは別人のように険しくなっていて
彼の瞳は一切の光を失っていた。
「そんなの違うわ。絶対に貴方のせいじゃない。貴方のせいなわけが無いじゃない！！」
力の限り声を張り上げ、彼の肩を揺すった。
「貴方は、間違ってなんかいなかったわ」
私は酷く、不出来な妻だ。
「ねぇ、學峯さん…」
辛いのは、苦しいのは、
涙を流したいのは、彼の方だったのに
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ミルメーク(プロフ) - 長い間お疲れ様でした！もし良ければ浅野親子関係で新しいストーリー作って欲しいです！ (3月21日 20時) (
レス) id: b3b06100e3 (このIDを非表示/違反報告)
hal - 非常に面白かったです！時間を忘れて一気に読みました。原作のイメージそのもので驚き、公式から浅野家スピンオフとして出せる作品だと感じました。私も学秀君が正気を保っていられたのも、浅野家が家族として何とか機能していたのも奥さんの存在が大きいと思っています (2023年3月13日 1時) (レス) id: 96f1185981 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメルコーン(プロフ) - 奥様が泣いたてしまったシーンが私の中で凄く感動して泣きました、これからも更新する予定でしたら更新していただけると嬉しいです！ (2022年9月2日 0時) (レス) id: bee3de3e8f (このIDを非表示/違反報告)
おむれつ(プロフ) - おもちゃ箱さん» コメントありがとうございます。キャラの口調等は特に気をつけて書いているのでそう言って頂けると嬉しいです！ありがとうございます。更新これからも頑張っていきます。よろしくお願いします。 (2022年2月24日 21時) (レス) id: b911301b3c (このIDを非表示/違反報告)
おもちゃ箱(プロフ) - キャラの特徴がすごくつかめていて、読んでいて違和感がないです！！お話も本当に面白いです！更新待ってます！ (2022年2月23日 21時) (レス) @page17 id: c78fba56e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おむれつ | 作者ホームページ：http://mokyumokyuuu
作成日時：2022年1月11日 19時
